外国人・シングルマザーを支える愛情ご飯
【東京都新宿区・新宿ニコニコ子ども食堂】
「コロナ前は誰でも食事に来れるオープン型のこども食堂を月2〜4回、生活困窮家庭のみ対象にしたクローズ型のこども食堂、秘密基地を月5回行っていました」
そう話すのは『新宿区ニコニコ子ども食堂』代表の猪爪まさみさん。オープン型のこども食堂は会場としていた地域センターがワクチン接種会場になったため現在、中止しているという。
「クローズ型こども食堂は生活保護や児童扶養手当受給者、経済的に困難な世帯対象にお弁当を配布しています」(猪爪さん、以下同)
もう一つの柱は生活困窮世帯への食材の配布。月1回、現在42世帯に配布。去年の11月からは41世帯を対象に食材を宅配。子どものお預かりや無料塾も行っている。
困窮家庭やシングルマザーに寄り添ってきた猪爪さん。
「昨年の学校が休校になったときが、シングルマザーたちがいちばんつらかったでしょうね。先行きの不安、家族は子どもと自分だけで相談もできずに“仕事を続けられるのか”“このアパートに住んでいられるのか……”ほかの大人と話せない不安で押しつぶされそうになった時期です」
次第に両親がそろっている家庭や、外国人世帯の困窮も目立つように。
新宿区は人口の1割以上が外国人。コロナ前まではホテルや病院、飲食店などで裏方として働いてきた。彼ら、彼女らは日本で仕事をし、結婚、子育てをしていたのだが、コロナ禍で一変した。
「仕事ができなくなったり、大幅に減らされたことで生活が苦しくなり、食材の配送を希望する外国人世帯が増えました。シングルマザーや外国人世帯へのしわ寄せを肌で感じています」
中でもシングルマザー世帯は日ごろからなにかと傷つくことが多く、親子で頑張って生きていると猪爪さん。
「私たちのお弁当はすべて手作り。知らないおじさんおばさんでも誰かが作ったおいしいものを食べることで、くじけそうになったときの力に変わってほしいと期待しています。1回、2回ではだめ、胃袋の中に愛が入っていくと何年かで芽生えるんです。おふくろの味ですからね」
食材の発送で心がけているのは箱詰めを『実家から届いた荷物』風にすることだ。
実家から愛がこもった荷物が届くように、何人もの支援者の愛が込められている。
「社会は冷たい人や傷つける人ばかりじゃない。考えてくれる人がいることに荷物ひとつで気づいてもらえたらと思います。箱を開けたときに今までつらかったけど、また子育てを頑張っていこうという気持ちになれたらいいです」
猪爪さんの活動の原動力は参加する母親たちの存在だ。
「子どもの支援はまずお母さんの支援からだと思っています。まずはお母さんの背中を支えたいと考えています」
活動を支える人々の中には高齢者も少なくない。
「コロナが落ちついたら食事や手伝い、寄付でもいい。あなたらしい関わり方でこども食堂に参加してみてください」