「発症して陽性になれば帰れないので沖縄で療養することになります。観光客で病床が埋まれば県民の命が脅かされます」(前出の観光業関係者)
こうした現状に県民の怒りは頂点に達しそうなのだ。入院する理由はなにも新型コロナに限らない。脳卒中や心筋梗塞、大動脈解離など突然起きる疾病。事故に遭うことだって考えられる。
沖縄県は「お願いしか出来ない」
県民の命が危うくなった時、誰がどう責任を取るのか?
「県政へのあきらめと不信感が強まっています。沖縄では観光業界に誰も強く言えませんが、本音では観光客を止めてほしい。基地問題はすぐに動いて強い態度を示すのだからコロナも同様にやってほしい」(前出のライター)
沖縄県はどのように危機感を抱いているのだろうか。
「県では去年の7月から沖縄に来る前のPCR検査を呼びかけています。ただ、そのお願いを県からは県民にしか言えません。ですので、観光客に対しては国から呼びかけてほしいと訴えています」(県の担当者、以下同)
北海道や沖縄への航空便搭乗者を対象にした国のPCR検査の受検率は4%ほど。強制力がないため、要請を無視する旅行者は少なくない。
「法律上、検査を義務づけることはできません。県としては“来ないでください”としか言えません」
検査への強制力も罰則もない。そのため、県では実効性の高い法案の施行を国に要望してきたという。
「感染は沖縄県民の中で広がっており観光客だけが悪いわけではないんです」
前出・徳田医師が提案するように検査を繰り返したり、濃厚接触者の追跡調査をすることはできないのだろうか。
「やる予定はないです。人手も足りませんし、コスト面などを考えても現実的ではない」
県からの回答は終始「お願いをしている」にとどまった。
「観光客に完全に来ないでとは言えません。なので、リスクを抑える対策を考え、実行しなくては沖縄県の感染は止まりません」(徳田医師)
夏休みは終わったが秋の観光シーズンが始まる。
「沖縄で感染して帰る可能性もあります。もっと落ち着いてから来てほしいです。私たちも我慢しています」(前出の観光業関係者)
県民の願いは旅行を計画する人々に届くのだろうか─。