調子に乗ってもうひとつ、狂気作品を。『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(WOWOW)の第3話「罪深き女」では、また異なる狂気を見せた清原。
同じアパートに住む男の子が派手な母親(水崎綾女)に虐待されていると思い込む女子高生の役だ。自分も生真面目な母親(坂井真紀)と二人暮らし。シングルマザーに育てられているという同じ境遇に共感を覚え、守ってあげようとするも、実際はおおいなる勘違い、そしておぞましい事実があったというストーリーだ。
激しい思い込みで慈愛に満ちた姉気取りの清原は、かなり怖かった。間違いなく狂気であり、物語の続きを想像したものの「たぶんこの娘に救いはないだろうな」と思わせた。母と娘の悲しい負の連鎖に、虚しさを覚える問題作でもある。原作は湊かなえ、ってところで、後味の悪さを想像してほしい。
今後の活躍に期待できる女優の1人
ちょっと振り幅の大きい作品ばかりを挙げてしまったが、まずは主演作で彼女の実力を目の当たりにするほうが手っ取り早い。産婦人科医院で看護師見習いを演じた『透明なゆりかご』(2018年・NHK)は必見。妊娠・出産を綺麗事では終わらせず、手厳しい現実と向き合う清原の真摯な姿が胸を打つ。号泣必至なので、ティッシュ箱抱えて観てほしい。
また、『螢草 菜々の剣』(NHK BSプレミアム)では、父は不正の濡れ衣を着せられて切腹、母は病で亡くなり、女中奉公に出る武士の娘役。本懐は「父の仇討」だが、父だけでなく奉公先の夫婦(町田啓太&谷村美月)への忠誠心が物語の主軸となる。
清く賢く辛抱強いヒロインは頼もしかったし、殺陣も想像以上にキマっていた。武士の娘として、女中(というか乳母)として、そして剣士としての要素を完璧に満たした。この役に関しては未完ではなく完成形だったなぁ。
すでに、代表作と言える作品がいくつもある清原だが、今後も倦まず弛まず良質な作品に出てほしいし、モヤモヤやジレンマをぜひ抱え続けてほしいとも思う。
吉田 潮(よしだ うしお)Ushio Yoshida コラムニスト・イラストレーター
1972年生まれ。おひつじ座のB型。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News it!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。