相続するかどうかは慎重に
いざ親が亡くなって実家問題に直面したとき、知っておきたいのは、必ずしも相続することがいいわけではないということだ。
所有した時点では財産であっても、相続後に「負の財産」になることもあるので、相続放棄の可能性もあわせて考えておく必要がある。
住む予定のない親のマンションを相続してしまったが、老朽化しているため買い手も借り手も見つからない、だけど毎月の管理費や修繕積立金、固定資産税だけがかかってしまうなんて最悪だ。
「本当に相続をしたほうがいいのかどうかは、慎重に考えるべきです。とはいえ、コロナ禍でリモートワークやワーケーションが注目され、郊外の広めの戸建てなど、負動産とされていたものでも見直される例もありますから、まずはこれから相続する実家が傷まないようにメンテナンスをしておくことが大事といえるかもしれません」
相続税が8割減になる特例制度
親が亡くなって家を相続するときに大きな問題となるのが相続税だ。実際には売れない家であっても、高額な評価額がつけられてしまえば莫大な相続税を支払わざるをえない。
配偶者が相続する場合とは違い、子どもが相続するときには「配偶者の税額の軽減」が受けられないということもあり、相続税を安くすますことに越したことはない。
ここで知っておきたいポイントは、親の不動産を相続する場合、「小規模宅地等の特例」という制度を利用すると、相続税評価額が最大で80%も減額できるということだ。
「例えば、賃貸暮らしをしていた子どもが実家に移り住んだ場合、一定の要件を満たせば、この特例の適用を受けることができます。
仮に親1人子1人で、親が亡くなって1億円の実家を相続する場合は、相続するのが実家だけであれば相続税はゼロになります」
ただし、この制度を受けるには、相続が発生してから10か月以内に申告しなければならない。
「実家を大切にしたい」「家業を大切に守っていきたい」と考えている人は、速やかに専門家に相談し、この適用を受けられるようにしよう。
DIY賃貸や住み放題サービスでリスク削減
最近は、家を「売る」「貸す」方法が多様化しており、例えば借り主が費用を負担して自分の好きなように内装をリフォームできる「DIY賃貸」などが注目を集めている。
「誰も住まなくなった古い空き家を賃貸に出すには高額のリフォーム費用がかかりますが、DIY賃貸なら元手がない場合でも人に貸すことができます。
借り主が初期の修繕費用などを自分で出して借りている物件なので、家賃滞納のリスクも低くなるでしょう」
そのほか、「月額数万円で全国住み放題」という空き家を再利用したサービスも登場している。
最寄り駅から徒歩圏内で、間取りや広さなどに条件はあるが、空き家オーナーは使っていない家を貸し出してリノベーション費などの初期費用を負担するだけで、2〜3年で賃料収益が出るモデル設計になっているという。
テレワークやワーケーションが推進されるなか、今後ますますニーズが高まりそうだ。
また、売りたい人が仲介業者を通さず、自ら販売活動を行うネット上のサイトもできている。親の空き家を再利用したいと考えている人は、ぜひ活用してみたらどうか。
☆知っておきたい! 相続前後の処分術 <1>「相続しないこと」も検討する <2>相続税の特例をうまく利用する <3>最新の空き家利用法を活用する