猫への悪意はいずれ人間に
かつて猫13匹を殺傷、その様子を撮影しインターネット上に投稿していた男、B(当時52)は裁判で「飼っていたメダカが殺されたり、糞尿の被害に遭って猫を駆除したかったのは事実。だが、駆除より虐待動画の投稿が目的になった」「猫を憎んでいた」などと供述。だが、傍聴した関係者によるとBは法廷でも反省している様子は終始見られなかったという。
動物虐待事件をテーマにした映画を作る北田直俊監督はこれまで動物虐待犯本人やその家族と対峙してきた。
「虐待犯は一様に悪びれる様子はありません。家族も同様の反応で“たかが猫を虐待しただけでなぜ自分の家族が裁かれなければならないのか”というような状況です」
実は虐待を“社会正義”と正当化し、個人的な怒りを動物に向ける虐待犯は多い。
冒頭の愛護関係者は「特に猫の命を軽視する人間が多すぎる」と憤る。ほかにも動物がいる中でなぜ猫ばかりが狙われるのか。
国際社会病理に詳しい桐蔭横浜大学の阿部憲仁教授に聞いた。
「まず、動物虐待犯には特有の性格タイプがあるとみられています。
動物に対しての無知、偏見を持っているタイプ。苦しむ姿を見たいサディストタイプ。動物の命を支配したいパワー&コントロールタイプ。親からの虐待発散のため動物に危害を加える危険信号タイプの4つがあります」
さらに猫は自由に動き回り、犬のように従順ではないことからも嫌悪し、虐待のターゲットになりやすいという。
虐待の対象が動物から人間へと向かうことはあるのか。
「猫に危害を加えることは、その人間が仕事や家庭などでの個人的な事情から他人に対して明らかな攻撃性を抱えていることを意味します。ですが人間に手を出すのはハードルが高すぎる。そのためモノではなく、より人間に近い猫を虐待するのです」(阿部教授、以下同)
そして、攻撃は猫だけでは満足できなくなる可能性を多分に秘めているという。
「猫の虐待を“かわいそう”だけで終わらせると社会にとって大変危険です。人間に対する攻撃性を抱えた人間が社会に増幅するのを野放しにしていることになりますから」