人口14億人を超える中国で、少子化が深刻な問題になっている。出生数は年々減少しており、人口爆発を防ぐため35年以上続いてきた「一人っ子政策」を'16年に撤廃、2人目の出産を認めた。しかし出生数の減少は止まらず、'21年5月には「三人っ子政策」が示された。将来の人口減少を止めようと躍起になっている中国政府だが、その道のりは厳しそうでーー。
深刻な少子高齢化が進む中国社会
1975年から実施され、現在の少子高齢化の原因とされている一人っ子政策が2016年に撤廃された今では、山西省の公園では親子4人連れの銅像が見られる(父親は子どもを肩車、荷物を持っているのに対して、母親は手ぶらと中国の家庭の権力構造を表現。母親の衣装はなぜかアオザイのように身体のラインを強調)。
それでも日本以上に深刻な少子高齢化が進む中国は今年5月末、夫婦一組につき3人まで子どもをもうけることを認める方針を発表した。
厳格に実行されていたと思われていた一人っ子政策だが、都市部・農村部や少数民族といった条件次第では事情が異なっており、夫婦双方が一人っ子の場合、第2子出産が認められた時期もあった。一人っ子政策があった頃に、筆者も実際に中国各地で兄弟姉妹を目撃したことがある。中には第2子を出産したため地方自治体に罰金を払っていた夫婦もいたようだ。
世界的映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ、『紅いコーリャン』や『初恋の来た道』等の作品で知られる)は、2013年に3人の子どもの存在が発覚。翌年1月、約750万元(約1億3000万円)と、収入に比例してかなり高額な罰金が科されたと報道された。
一人っ子政策が撤廃された今となっては完全な払い損だが、張芸謀監督の再婚相手であり、32歳年下の妻で女優のチェン・ティンは、三人っ子政策について「すでに任務を完了しました」とSNSに投稿。ネットユーザーからは「爆笑した」「産むのが早すぎた」といったコメントが殺到したが、チェン・ティンも中国の政治体制では「罰金を全額返還しろ!」とはストレートに言えないのだろう、心中お察し申し上げる……。
そもそも中国政府が一人っ子政策をなかなか撤廃できなかったのは、違反者に対する罰金の額が非常に大きく、財政が潤ったことも理由の一つといわれている。
児童の教育費の高騰も問題になっている中国では、3人まで子どもを持つことが許されたとしても、政府は少子化に一層拍車がかかることを懸念。対策のひとつとして、高騰し続ける学習塾の月謝の引き下げを政令化したほどだ。
“公園で募集”オドロキ婚活
一人っ子政策の名残が強く残る都市部では、結婚の条件は、収入や持家の有無が重要視され、一方では離婚率も年々上昇している。また、そもそも結婚をしようとせず、独身生活を続ける人も増えている。
上海の人民公園では、老親が子どもの結婚相手の条件を傘に貼って探している風景が日常のものとなっている。かつての一人っ子政策の影響で、出生する男女比が非常に偏り、結婚できない男性が増加しているのも他の国の少子化には見られない傾向だ。
経済力ではとっくに日本を抜いた中国ではあるが、社会保障はまだ日本の方が手厚い。中国の政治家の決断のダイナミックさは素直に評価すべき点と強引すぎる点と両極端ではあるが、少子高齢化については、前途多難である。