愛憎は表裏一体
韓国の芸能界で、サセンとはまた違った形でアイドルたちの活動を脅かすのがアンチと呼ばれる存在だ。アイドルの活動を妨害することを目的に活動をする人々の総称で、SNSの拡散力を巧みに使って組織的に動くのが特徴。ときにメンバーの脱退やグループ解体につながることもあり、芸能事務所も無視できない存在となっている。
「アンチの多くが実は元ファン。異性問題や不祥事の発覚をきっかけに、好きから嫌いに転じてしまうパターンです。ここ最近で一番、アンチ活動が激しかったのが'20年1月に授かり婚を電撃発表したEXOチェン。好青年キャラのいわゆるリアコ枠だったのでファンの衝撃は大きく、アンチに転じてしまう人が続出。
同志が結集し、グループからの脱退を求めて座り込みデモを行ったほか、脱退要求の広告をバスや新聞に掲載するなど、大々的なアンチ活動を展開しました」(前出の韓国人記者)
同グループのチャンヨルも、10股疑惑をきっかけにアンチが大量発生。アンチ扇動組織のひとつが募金で集まった資金で「チャンヨルOUT」と記載したアドバルーンを彼の所属事務所前に飛ばすなど、派手な要求が話題を呼んだ。
「韓国の芸能界では、ファンが自主的に応援グッズを作ったり、カンパを募って現場にケータリングサービスを手配したり、ファンが運営の一部を担うような文化があり、その声が芸能事務所にかなり尊重されてきた過去があります。気に入らないことがあれば即異議を唱えるのもその流れ。それに影響されてでしょうか、日本を含む海外のK-POPファンの間で『#〇〇脱退しろ』とカジュアルにアンチ活動をする人が増えているのが気掛かりです」
とは前出の日本人ライター。
「韓国では現在、スポーツ界や芸能界を中心に過去のいじめの告発が相次いでいて、人気アイドルも次々と騒動に巻き込まれました。疑惑を掛けられたアイドルはもれなくSNSで脱退要求が出されていましたが、事実無根だったケースも多く、二重の被害に遭ってしまったようなもの。いじめ騒動とは別件ですが、東方神起ユンホに脱退要求が一部ファンから出ているという件も気掛かりです。
ユンホは今年2月、新型コロナの防疫規制に違反した件で立件されましたが、2人組なのに脱退要求とは何事かと(苦笑)。安易にアンチに転じる前にまず情報を精査し、自分の考えを整理すべきだと思います」
アイドルとは本来、崇拝される対象で、あこがれの象徴。間違っても歪んだ愛の対象にしたり、ストレスの解消口にしないようにしたいものだ。
取材・文/新森実夏