「ツキノノア」母の活動

 母親が、月乃さんの自殺を公表したのは通夜の後。同時に、「ツキノノア」名義のアカウントを開設した。

 最近では、クラウドファンディングをし、写真集作成の資金にした。ネットなどで公表している写真のほか、子どものころの写真も加えた。

「金額に応じて、娘の私物も差し上げました。脳梗塞の後遺症があるため、私もいつどうなるかわかりません。そのため、大事にしてくれる人がいるなら渡したい」

取材を受ける月乃さんの母。ケータイに残された娘とのやりとりを見ながら話してくれた
取材を受ける月乃さんの母。ケータイに残された娘とのやりとりを見ながら話してくれた
【写真】「全員きらい。生きるのが苦しい」月乃のあさんの直筆遺書

 母親は現在、SNSを通じ、悩みがある人の相談に乗る。

「“今、ビルの上にいます”というものもあります。当初は、自分が体験していないのに、アドバイスができるのかと思っていましたが、今ではみんなの気持ちがわかる気がしています」

 なぜ相談に乗るのか。

「生きていてほしいんです。だって、残された人はつらすぎますから」

 一方、自殺のきっかけになった、ネットで中傷を書いたカフェ(前出)関係者3人とは話し合いをした。

「当時のことを考えると複雑な気持ちですが、ちゃんと向き合えてよかったです。憎み合うだけじゃなく、話し合うと通じることがあると思います。遺書には『AさんとBさんを憎み続ける』と書いてありました。私も《絶対に許さない》と思ったこともあります。でも娘もきっと、3人のことは許していると思います」(同)

 月乃さんの活動が記憶に残り続けてほしい。

 政府は刑法の「侮辱罪」を厳罰化する方針を固めた。プロレスラーの木村花さんが亡くなったことを受けたものだ。ネット上の誹謗中傷も減ることを期待したい。

《取材・文/渋井哲也》