実際には、千葉県から来たわけだが、この設定が不思議ちゃんキャラにつながった。同じころ、DAIGOも「星から舞い降りたロック王子」という設定の「DAIGO☆STARDUST」として活動。しかし、パッとせず、ブレイクできたのは“元総理の孫”という「事実」を公表したおかげだ。

 DAIGOはのちに「ゆうこりんさんの設定にはかなわなくて」と語ったが、たしかに、こりん星ネタにはいじられるだけの面白味があった。肝心の本人がどこか抜けているので、ツッコミを入れて困らせるにはちょうどよかったのだ。有吉弘行に「ウソの限界」というあだ名をつけられたのも、その一例である。

 ただ、本人も「ウソの限界」を悟ったのか、2009年の末に「こりん星は爆発しました」としてキャラ変してしまう。しかし、『ツマミになる話』でも、このネタはしぶとく生き残っていた。

 彼女が「親に実家をプレゼントしたことがあるんです」と言うと「こりん星に?」と水を向けられ「あ、そうです」とリアクション。すかさず「こりん星は爆発したって言っていたのに」とツッコまれていた。

 不毛なやりとりとはいえ、彼女にはこういうものが大事だ。この番組でも「今は自分の記事とか見ないようにしている」と発言したら、柴田から「面白いことが書いてあるから。それをネタにしていくくらいじゃないと」と言われていた。「そうですね。仕事につながればね」と答えた彼女だが、賞味期限切れに思われたこりん星ネタでも、まだ笑いはとれるのである。

 むしろ、スキャンダルでしみついた生活疲れの印象をごまかす意味でも、面白くいじってもらうことが必要だろう。芸能人にとって、メディアは嫌うより利用するもの。そこで役立つのは、笑えない事実より、笑えるウソなのだ。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。