もやし1袋に1000万円
そして、彼らに会いに来る女性たちも、以前とはまったく客層が異なるという。
「昔は30代以上の女性が中心でしたが、今は10代後半から20代前半がメイン。彼女たちはパパ活で稼いだり、風俗で働いたりしてホストクラブに来てくれます。変な男に引っかかるよりはお店側の管理もあるからと、風俗で働いていることを親が黙認しているという子もいて、時代の変化を感じていますね」
男女ともに夜の仕事に対する心理的ハードルが下がっているようだ。また、かつては自分のホストをナンバーワンにするために高級酒を注文し続けるのがホスト遊びだったが、その“遊び方”も大きく変化しているという。
「シャンパンをオーダーしても『推し(担当ホスト)に身体を壊してほしくない』と言って、開栓せずに持ち帰る子も珍しくないです。ほかにも、担当に自分のテーブルにい続けてほしいからと、ソフトドリンク1缶などに300万~400万円払ったりする子もいます。もやし1袋に1000万円支払われた、という話も。 彼女たちは“担当とただ一緒に過ごす時間”のために投資をしているんです」
彼女たちにとってホストクラブは、お気に入りのホストをナンバーワンにする場所というよりも、好きな人と素敵な時間を共有する場所なのだ。
こうした傾向から、令和のホストとその客たちには、ある共通点を感じる、と森永さんは語る。
「どちらもコミュニケーションに飢えているんですよね。お客さんは『自分に共感してほしい』と思っていて、キャストは『誰かに認めてほしい』と思っている。
飲んで盛り上げることよりも、丁寧にお客さんの話を聞くのが僕らの現在の仕事ともいえるのに、コミュニケーションが苦手なキャストもいるので女の子の希望が叶えられないケースも増えています。昔は顔がよければ売れるとか、話術に長けていればのし上がれるなど、わかりやすい理由で売り上げがアップしました。でも最近は、容姿や話術は重視されなくなっていますね」
キャストはスキルアップをしたいところ。しかし森永さんは「それがいちばん難しい」と話す。
「まず彼らに“欲”がないので、お金が儲かるというだけではやる気が出ません。運営側が彼らのやる気スイッチを見つけてあげて、モチベーションを維持しなければならない。
昔は『3か月で成果が出せなければクビ』という世界でしたが、今は半年~1年かけて育てるようになりました。もちろん、怒鳴るのもご法度。僕も含めて、キャストの指導方法を模索している経営者はとても多いと思います」
トー横キッズに、大学生ホスト……。歌舞伎町はコロナ禍の混沌を映す鏡になっているのかもしれない。
森永ここあさん ●1994年、山口県生まれ。歌舞伎町ホストクラブALPHABET代表。元美容師でホスト歴は7年。4年前から経営者としての道を歩みだす。週末にガンダムのプラモデルを作るのが趣味。
岳野めぐみさん ●縁多代表。上級SNSエキスパート(一般社団法人SNSエキスパート協会)、コミュニケーション認定講座1級。銀座で女将を経験し、歌舞伎町PRを経てSNSマーケティングで起業。SNS支援実績は300社。
〈取材・文/大貫未来(清談社)〉