年々増加している、ネット上での「誹謗中傷」トラブル。最近では事態を重く見て訴訟問題に発展するケースも少なくない。NPO法人World Open Heartの理事長・阿部恭子さんの元には、誹謗中傷で「加害者の家族」となった人からの相談が増えているという。加害者本人の口から語られた驚くべき“言い訳”とはーー。阿部さんによる解説。

眞子さまも心を痛めた誹謗中傷

 2020年5月、プロレスラーの木村花さんがSNSの誹謗中傷により自ら命を絶つに至った事件を受け、国会でも法規制の必要性が議論されてきた。その後も、SNSの誹謗中傷を巡る問題はあとを絶たず、被害は芸能界や皇室にまで及んでいる。

 眞子さまの婚約者である小室圭氏は、母親の金銭トラブルが発覚するなど、皇族の婚約者にふさわしくないとして苛烈なバッシングを浴びてきた。一方的に報道され続けている数々のスキャンダルについて、小室さんとしても言い分はあるだろうし、すべてが真実とは限らない。

 しかし、小室さんを「成り上がり者」として軽蔑し、地位を剥奪したい人々にとって、もはや真実などどうでもよく、評価を下げる情報しか求めていないのではないだろうか。

 こうした世間の反応に、反論できない眞子さまは心を痛め、精神のバランスを崩されたとしても無理はない。インターネット上に自分に対する心ない言葉が溢れている事実は、この世に存在してはならないような感覚を引き起こし、人を追いつめる。

 集団による言葉の暴力によって生活を脅かされ、命を絶つ人が減らない状況に鑑み、誹謗中傷をした投稿者の特定を容易にする法改正が行われる等、被害者救済も進められている。こうした追い風を受けて、泣き寝入りせずに法的手段を講じて戦う人々も増えており、誹謗中傷の書き込みをした「加害者」の家族から相談を受けるケースも増えている。

 被害者からの訴えを受け、家族でありながらこれまで見たことのない姿に「まるで別人格」と驚愕する加害者家族もいて、匿名世界の闇も炙り出されている。ここでは、誹謗中傷の書き込みを特定され「加害者」となった人々の心理に迫りたい。

夫が「加害者」になったショックで流産

 恵(仮名・30代)の夫は、好きなアイドルのSNSに、性的な書き込みや、容姿を侮辱する書き込みを頻繁に行っており、相手からブロックされると拒否されたことに逆上し、別のアカウントから「家まで行く」「犯す」などと書き込み、脅迫と侮辱の疑いで書類送検された。

 恵には二人の子どもがおり、三人目の子どもを妊娠中だったが、事件のショックで流産してしまった。

「もう十年以上一緒にいますが、夫が命令形で話すのさえ聞いたことがなかったんです。ネット上での表現は、とても夫とは信じられませんでした。子どもになんて説明すればいいのか…」

 妻として何も気づけなかった罪悪感と夫への失望は計り知れないが、当の本人にはまったく反省の色が見えない。

「批判されたくないなら写真なんて載せなきゃいいんですよ。どうせ刑事事件にして話題を集めたいんでしょ。“犯す”なんて冗談ですよ、みんな書いてたし」

 と、被害者に責任転嫁するばかりだった。ところが、妻が流産した事実に触れた途端、表情が一転。

「本当に申し訳ない……。馬鹿なことをしました」

「二度とこんなことは絶対にしません」

 と涙ぐみ、ようやく改悛の情を見せていた。匿名ゆえにネット上では人格が豹変し、攻撃的になる人々も少なくないようだ。刑事告訴もあり得ることから、家族が犯罪者になる恐怖を訴える相談はあとを絶たない。