古きよき時代の温かさ『くるまやラーメン』

 フードコート出店とは対照的に、ロードサイド店舗の拡大で差別化を図ってきたラーメンチェーン店も多い。東日本を中心に152店舗を展開する『くるまやラーメン』はその代表格だ。

「1968年に東京都足立区で前身となる“うどん・そば店”を開業後、1970年に足立区の国道4号沿いで観光バスを改造したラーメン屋を始めたのが、現在のくるまやラーメンのルーツです」

 こう教えてくれたのは、株式会社くるまやラーメンの青山愛さん。広い駐車場を持ち、いつでも気軽に車で来店できる郊外型のラーメン店は、モータリゼーションが進んでいった時代背景にマッチし、人気を集めた。

『くるまやラーメン 奥戸店』へ足を運んでみると、車で訪れたファミリー層やカップル客も多く、昼食時は入店待ちのお客さんが並んでいるほどの人気ぶり。たっぷりのもやしが乗った『味噌ラーメン』(680円)は、コクがありながらもまろやかなスープが特徴で、やさしい味わいがクセになる。

家族連れでも各自が食べやすいように、くるまやラーメンは1一人前用のトレーで商品を提供される
家族連れでも各自が食べやすいように、くるまやラーメンは1一人前用のトレーで商品を提供される
【写真】飯テロ注意です!(笑) ラーメンチェーンの懐かしくて美味い一杯

 奥戸店では、小さなお子さんを連れた家族を案内する際に「お子さま用のイスをお持ちしますね」とやさしく語りかける店員さんの姿が印象的だった。

 また、熱々のラーメンが転倒して事故が起こらないよう、2007年からは丼の下に敷く独自のノンスリップマットを採用するなど、安心して食事ができる配慮を欠かさない。

お客さんだけでなく従業員にも配慮した事故防止用ノンスリップマット
お客さんだけでなく従業員にも配慮した事故防止用ノンスリップマット

「基本的にはラーメンの持ち帰り販売は行っておらず、Uber Eatsや出前館などの宅配サービスも採用しておりません。家とは違う店内の雰囲気を含め、外食の本来の楽しさを感じることのできる、大切な時間を提供したいと考えています」(青山さん)

 コロナ禍で外食の機会が減っているなか、味のこだわりはもちろん、接客を含めた居心地のよさを追求する思いこそ、くるまやラーメンが現在も色あせない理由のひとつだろう。