丁寧な対応へのお礼として、後日、感謝の手紙にささやかな菓子折りを添えて送った。

 すると翌日、記者の携帯電話に1本の電話が─。

「川嶋辰彦でございます。そちらさまから結構な詰め合わせのお品物をお送りくださいました。誠にありがとうございます。そして、ここから先はお詫びを申し上げないといけないのですが……」

 穏やかな口調で、言葉を選びながら話し進める。

「どんなご趣味を?」

「私のささやかな“こうしたい”というお気持ちを、もしお許しいただければ、マスコミュニケーション関連の方のお品物は、理由など関係なく、ご遠慮申し上げるようにいたしております。ご無礼をお許しのうえ、ご返送させていただいてよろしゅうございましょうか?」

 返送の提案に対し、記者が“着払い”を申し出ると、

「僕のお小遣いを眺めまして、もしそういうことでしたら、そのようにさせていただきますが、お小遣い箱にはたぶん、入っているかと思います。

 1トンくらいの隕石をお返しすることになると、僕のお小遣いでは、重量制限で難しくなりそうです。将来、そういうお見苦しいことが発生しましたら、喜んで着払いでお返し申し上げたく存じますが、今回は、そのお気持ちをありがたく拝聴申し上げて、先のような形で進めさせていただければと存じます」

 ユーモラスに返答しつつ、送付した手紙については「開封せずにお戻しさせていただきます」と言い、こう続けた。

「いずれ、ゆっくりお話し申し上げられるようになるときがまいりましたら、そして、私を許していただけるようでしたら、どうぞそのご書簡をお見せくださいませ」

 記者は今も、この手紙を保管している。

「これだけでお別れのご挨拶というのは寂しゅうございますので、差し障りない範囲で……。どんなご趣味をお持ちでいらっしゃいますか?」

 一連のやりとりの後、川嶋さんはこう切り出した。

「僕のほうから申し上げますと、今はできませんが、少年のころは木登りが大好きだったんです。今でも登りたいと思いながら夢を描いております。枝ぶり次第で、手の位置よりも足の位置が高くなる。そんなことを思うだけでも、僕自身が木登りをしているような楽しみに浸れます」