東大時代にはADのバイトも
香川の演技の評価が高いのは知られている通りだが、明るくて周囲への気配りも忘れないからスタッフ受けもいいのだ。
「『ルーズヴェルト・ゲーム』『流星ワゴン』などのプロデューサーも『半沢直樹』と一緒なんです。プロデューサーが演技力を買い、ウマも合う役者を続けて使うのは珍しいことではありません」(同・TBSドラマスタッフ)
香川と『日曜劇場』の関わりはまだある。東京大学文学部の卒業を控え、役者になることを決心した時期、『日曜劇場』も撮っているTBS系列の緑山スタジオ(横浜市)でアシスタント・ディレクターのアルバイトをやっていたのだ。
「アシスタント・ディレクターは制作現場の雑用係。縁故がないと出来ませんが、これも石井さんの肝煎りで決まりました」(同・TBSドラマスタッフ)
もともとは浜が香川に「役者になるのなら、裏方さんの苦労を知ったほうがいい」と助言し、石井さんに仲介を頼んだ。これにより、香川はスタッフたちとも知り合いになった。その人柄から、アシスタント・ディレクターとしても評判は良かったようだ。
こういった香川の軌跡を知ると、“ミスター日曜劇場”となったのもうなずける。『日曜劇場』はファミリー向けの作品が多く、それも香川の役者としての特性に合ったはずだ。ラブコメが多い放送枠だったら、事情は違っただろう。
香川は10月からはTBSの情報番組『THE TIME,』(平日午前5時20分~同8時)のキャスターも務めている。
毎週金曜日のみとはいえ、早朝から2時間40分の長丁場だ。売れっ子役者がやる例はあまりない。
これも『日曜劇場』が関係するのだろうか。
「いや、これは違います(笑)。9月末で終わった『ぴったんこカン・カン』の女性チーフ・プロデューサーを香川さんは大いに買い、信頼していた。だから、この番組には頻繁に出演していた。
実は『THE TIME,』のチーフ・プロデューサーは同じ女性なんです。このため、『ぴったんこカン・カン』の司会だった安住紳一郎と常連ゲストの香川さんが、そろってキャスターになるという離れ業が実現しました」(同・TBSドラマスタッフ)
新人クラスから大物まで、スタッフと付き合わない役者は少なくない。
だが、香川は正反対。スタッフたちと積極的に接している。それが成功の一因に違いない。
高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立