35歳の若さで外務副大臣という要職に就いた鈴木貴子副大臣。政治家であると同時に女性であり、母親でもある。彼女の政治へ臨む姿勢とは。そして、日本のために何をしていきたいと考えているのか、ズバリ斬り込んだ!

求められる機動力

「父・鈴木宗男は、家族を持って子どもが生まれても24時間“政治家鈴木宗男”であり続けた。でも、私はあえて“そこに鈴木宗男の限界がある”と言っています」

 からっと笑いながら力強い口調で話すのは、鈴木貴子衆院議員。自民党の女性局局長代理、2児の母、そして外務副大臣─多彩な役割を担うからこそ、

「私は政治家・鈴木貴子であると同時に女性であり、母親・鈴木貴子でもある。それぞれの顔を通じて、さまざまな立場の人に寄り添う政治を実現していきたい」

 と言葉に力を込める。

 鈴木さんは27歳のときに初当選。以後、史上最年少で防衛大臣政務官に就任するなど、平均年齢が50代後半の国会議員の中で、若手の筆頭格として邁進してきた。直近では、孤独・孤立対策の議論をリードし、内閣官房に孤独・孤立対策担当室を設置した。

「よく行動力を掲げる政治家がいますが、それってもう古いと思うんです。例えば、被災地へ行って視察をする。アクションそのものが行動力になってしまっている節がある。

 視察するだけだったら誰でもできる。大切なことは、そこで何をするか。限られた資材、限られた時間、限られた情報の中で実行することが求められる。機動力がなければいけない」(鈴木さん、以下同)

 実際、鈴木さんは、自らと同じ立場である子育て世代のお母さんたちと、草の根で問題を解決しようとしている。

「同じ保育園に通っているお母さんやお父さんたちと話すと、行政のサービスに対して不満を募らせている方が少なくない。行政としては子育て支援をしているのですが、その施策が届いていないがゆえに、双方間で目詰まりが起きている。

 そこで、子育て世代、子育てが一段落した世代、シングルマザー、そういった方々が市長と意見交換できる場をセッティングしてみたんです。すると、目詰まりが少しずつ解消していった。コミュニケーションが足りていないことで、政治が遠いものになっていると痛感した」

 成功体験を提供することができれば、先のお母さんたちのように政治にポジティブな印象を抱く人も増えていく。そう鈴木さんは主張する。

「孤独・孤立対策担当室を設置したものの、そういった部署があることを知らない人も多いんですね。私たち自身、もっと声を大にして発信していかなければいけないのですが、制度が置物化していて、必要な人に届いていない。

 本当に政治の支援が必要な人は、選挙に関わる余裕すらない。「選挙に行こう」と呼びかけても、そんな余裕がないんですね。制度を作ったなら、それが行き届くようにし、幅広く浸透する─文化にまで発展させていくことが大事」

 入り口はつくる。しかし、出口までは考えていない。それは制度だけではなく、サービスも同様だと話す。一例として、多目的トイレのベビーキープを挙げる。

国会で発言中の鈴木貴子外務副大臣
国会で発言中の鈴木貴子外務副大臣

「自分が用を足す間に子どもを座らせておくベビーキープ……遠すぎません?(笑)『目を離さぬように』と言われても手は届かないし、子どもが勝手に開閉ボタンを押してしまうことも。こういった経験は、お母さんだったらあるあるだと思います。

 利用者目線になっていないサービスがたくさんある。子育て支援を手厚くするといっても、同じ目線になれない人が進めると置物化するだけ」

 そのためにも、国会議員に女性が増えることは望ましいと唱える。女性議員が増えれば、現実的な子育て支援や女性の社会進出の機会が実装される可能性は高い。だが女性議員比率の国際比較を見ると、日本は190か国中165位(衆議院女性議員比率)。

 だが、議員候補者の一定数を女性と定めるクオータ制には、「賛成とは言い切れない」と、悩む姿を隠さない。

「女性の声を代弁するために女性議員を増やすのではなく、女性が増えることによる多様性の創出が重要。女性といっても、立場は実にさまざまです。いろいろな女性に対する理解が広まることが大切なのであって、単に女性の声を大きくするだけで、若手枠やシニア枠もないと公平性に欠ける。ここでもまた制度がひとり歩きしてしまう」