脳卒中は一体どんな病気なのか?
元気で何の前兆もないのに、突如として発症するのが脳卒中の怖いところ。でも脳卒中という言葉はよく聞くが、詳しい症状や治療法などについてはご存じだろうか? 脳卒中の専門医に詳しく聞いた。
岡崎さんが話すように、脳卒中の実態はよく知られているとはいえない。そこで、はしぐち脳神経クリニック(福岡県福岡市)院長の橋口公章先生に詳しく聞いた。
「脳卒中は、脳の血管に異常が起こる病気の総称として使われています。脳の血管の異常は大きく分けて3つ。脳の血管が詰まるのが『脳梗塞』で、脳の血管が破れるのが『脳出血』。そして脳表面の膜と脳の間にある血管が破れる『くも膜下出血』という症状があります」
岡崎さんは脳出血だった。
「脳出血にも出血する部位によって症状が変わります。大脳だけでも被殻出血、視床出血、皮質下出血があり、加えて脳幹出血、そして小脳出血があります。出血した部位によって症状も変わります」
脳卒中の症状はひと言では言い表せないようだ。では岡崎さんが患った小脳出血とは、どのようなものなのか。あまり体験談を聞かない病気だが、珍しい病気なのだろうか。
「脳出血になるのは、脳卒中の中の2割程度です。そして小脳出血は脳出血の中の約1割。多くはないですが、珍しいというほどではありません。患者はほとんど50~60代以上ですね。小脳は運動のサポートをする器官。なので、小脳出血が起こると、酔っぱらったような歩き方になったり、舌をうまく動かせず呂律が回らない話し方になったりします。ほかの脳出血と異なるのは動くけどバランスが取れない状態なので、麻痺とは違います」
動かせるようにするにはリハビリが必要だというが、脳の出血部位によってリハビリの内容も変わるのだろうか。
「何ができないかによってどのようなリハビリをするかが決まるので、個人差が大きいです。ただ、後遺症によっては、出血部位にかかわらずリハビリの内容は似たものになることがあります。特に歩けない場合には歩くためのリハビリは必須。これは大脳出血でも小脳出血でも同じです。そしてどの症状でも、できないことをできるようにするわけですので、リハビリはつらいものになります」
脳卒中になる前に、何か前兆はあるのだろうか。
「脳卒中は、ある日突然起こる病気です。脳梗塞やくも膜下出血の場合は運動障害やめまいなどの前兆が出ることもありますが、脳出血の場合は前兆なく発症することがほとんど。脳の血管が傷んで破れるまで気づかないのです」
岡崎さんも、ある日突然めまいがして動けなくなった。
「小脳出血では、後頭部の痛みやめまい、吐き気といった初期症状が出ることがあります。初期症状が出た場合は、すぐに病院に行かなければ手遅れになる可能性があります。その状態が数時間続けば意識を失い、最悪死に至るケースもあるのです」
予防できるのだろうか。
「前兆はなくても、実は予防することは可能です。脳出血を罹患する人の多くは、高血圧なのです。つまり、日常の高血圧を放置しておかないことが脳出血の予防になります」
突然、脳卒中で倒れたりしないように、高血圧には注意しておきたい。
<取材・文/仁井慎治(エイトワークス)協力/企画のたまご屋さん>