コロナで増えた?“トップの失言”

【企業・その他部門】

<大賞>  サントリー 新浪剛史社長
「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」

<次点> タマホーム 玉木伸弥社長 「ワクチン接種をしたら5年後に死ぬ」 八代英輝弁護士 「共産党は暴力的な革命を廃止していない」 高橋洋一 「日本の新型コロナウイルス感染状況は先進国に比べて“さざ波”」

 今年は、「企業のトップによる失言が多かったイメージがある」とは吉田さん。サントリー、タマホームのほかに、KADOKAWA代表取締役である夏野剛さんが、子どもの運動会や発表会などが無観客で行われていることに対し、「くそなピアノの発表会なんてどうでもいい、オリンピックに比べれば」と発言し炎上したことも記憶に新しい。

「サントリーの46歳以上の社員のモチベーションが心配になる(苦笑)。若手は将来、リストラされるかもしれない恐怖を感じたでしょうし、まさに失言ですよね」(吉田さん)

 また、タマホームは「接種したら無期限の自宅待機」とも発言し、株価が暴落した。こうしたコロナ関連の失言が目立ったのも、今年の特徴だろう。

タマホームの玉木伸弥社長(タマホームのWebサイトより)
タマホームの玉木伸弥社長(タマホームのWebサイトより)
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「データを見るにさざ波だったのは事実なのに、高橋洋一さんは内閣官房参与を辞任した。コロナを過度に恐れる人たちによって辞めさせられたといっても過言ではない。

 また、『サンデーモーニング』で、第5波で急激に陽性者が減ったことを受け、関口宏が“これでいいんですかね……”とこぼしていた。減ってんだからいいに決まっているだろと(笑)。コロナに紐づく形でSNSを中心にトンデモ発言が多かったことも特徴」(中川さん)

内閣官房参与を辞任後、数量政策学者としてYoutube等に出演する高橋洋一氏(Youtubeより)
内閣官房参与を辞任後、数量政策学者としてYoutube等に出演する高橋洋一氏(Youtubeより)

 また中川さんは、今年は過去の失言が発掘されるケースが顕著だったとも付言する。

「最たる例は、小山田圭吾や小林賢太郎。彼らは過去の問題発言が引き金となり、オリンピック関連の仕事から辞任した。

 障害者に対するイジメの事実は言語道断ですが、何十年も前の発言をまるで遺跡発掘のように探し出し、引責を要求するのは、さすがにやりすぎではないか

 前出のDaiGoも過去には、「差別発言ってね、頭が悪い証拠なんですよ。IQが低い人ほど差別的な発言をする」という発言をしていた。それを発掘した人たちからは、今回の失言に対して「特大ブーメラン」と揶揄する言葉が。差別主義者をディスっていた過去の言葉で、自らが斬られてしまう結果になった。彼の場合は自業自得だが、

発掘された失言が、突然、ブーメランのように戻ってくる。こうした背景には、テレビやラジオの発言を切り取るだけで取材をしない“こたつ記事”が氾濫し、質の悪いニュースでもPVを稼げることが大きい。

 有名人の失言がコンテンツとして消費されることがわかったため、過去の発言でさえ商品化してしまう」(中川さん)

 吉田さんは、「区別が必要」と話す。

差別的、侮蔑的発言は、失言とは違いますよね。そういった発言にはきちんとノーを突きつけないといけない。そして、失言の中には“うっかり”ではなく、その人の本音もある。

 有名人が失言をしたときに、受け取るわれわれが本当にそれが失言なのかを区別しなきゃいけない。過去の失言なんて、人間だったら誰だってあるはず。それを今の時代に失言と受け取っていいのか?」(吉田さん) 

 出てこないことが望ましいが、人間の“性”なのか、なくなることのない失言。どうせ出てきてしまうのなら、笑い飛ばせる失言で来年は楽しませてほしい!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)●博報堂を退社後『TV Bros.』編集者を経て、2006年からネットニュース編集者に。近著に『炎上するバカさせるバカ』(小学館)がある。
吉田潮(よしだ・うしお)●コラムニスト。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆し、『週刊フジテレビ批評』のコメンテーターも務める。著書に『親の介護をしないとダメですか?』などがある。

<取材・文/我妻アヅ子>