夫のSNS投稿に怪しいコメントを発見

 相談を受けた筆者は「自宅の防犯カメラに何かが映っているのでは?」と助言し、美鈴さんは夫の不在を見計い、防犯カメラからSDカードを抜き取ったのです。データを再生すると夕方に入り、翌朝に出る女の姿が……女を自宅に招き入れるために美鈴さんを追い出したことが明らかになったのです。しかもその女が美鈴さんの見覚えのある風貌だったのも引っかかりました。むやみに人と接触するべきでない期間なのに女と濃厚接触していた夫ですが、さらに美鈴さんを奈落の底に突き落とす事実が判明します。

 筆者は「旦那さんはSNSをやっていますか? 何か残っているかもしれませんよ」と聞くと、美鈴さんは「フェイスブックをやっています」と返します。美鈴さんと夫はフェイスブック上では友達同士。美鈴さんは基本的に夫の投稿を自由に見ることができるのですが、よく読むと不自然なコメントを発見したのです。

《昨晩は泣いてないよ。寝不足だったかな》《昨日は幸せな時間をありがとう》《愛してるって言ってくれたから、すぐに眠れたよ》と。美鈴さんは最初、これらのコメントはスパムだろう、夫も迷惑しているはずと軽んじていたのですが、コメント投稿者のページを見たところ、あ然。その女性は美鈴さんの大学の後輩であり、彼女のストーリーには旅館で浴衣を着た夫と一緒に映っている写真、公園でお互いの手をハートマークに合わせる写真、そして夜景を背に夫が彼女の肩を抱いている写真……そんなツーショットの数々が24時間限定で公開されていたのです。夫が妻の知人と不倫していたとは、特に悪質です。

 もともと美鈴さんと夫は夫婦でありながら、一つ屋根の下で暮らしたことはほとんどありませんでした。医師の夫は15年来、クリニックの雇われ院長として汗を流し、ようやく念願だった海外長期研修を実現したのですが、これは美鈴さんと結婚した年。最先端の医療を学ぶべく現職を辞し、2年間の予定でアメリカへ渡ったそう。美鈴さんは末期がんを患う母親の近くにいたいという理由で帯同せず、単身赴任という道を選んだのです。

 筆者が「研修中では、旦那さんの収入も少なかったのでは?」と尋ねると、やはりスズメの涙程度。美鈴さんは「生活費を送ってこないので独身時代の貯金を使い、底をつきました」と言い、健気に夫の帰りを待ち続けたのに恩を仇で返された格好でした。

 美鈴さんは「向こうにとっても離婚が時間の問題なら、こっちから言ってやりますよ!」と息巻きます。美鈴さんは医師免許を持っており、独身時の年収は900万円。仕事に復帰すれば経済的に不安はありません。コロナが収束し、病院への就職が決まり次第、離婚を切り出すつもりだそうです。

夫婦関係が悪くなったら「距離」を見直して

 ここまでコロナによる夫婦関係の変化により、思わぬトラブルに巻き込まれ、離婚が決定的になった2組の夫婦を見てきました。

 まず美乃梨さん夫婦の場合、あえて休日を合わせて一緒に過ごさないのがちょうどいい距離感でした。しかし、コロナ禍で夫は在宅勤務、妻は出勤減少。そのことで距離が縮まりすぎた結果、起こった不幸です。適切な距離を保っていれば、夫の目に妻が家事をする様子は入らず、小姑のような小言を浴びせることもなかったでしょう。そして夫婦がほどよくすれ違っていれば、夫が生活費の負担見直しを言い出すタイミングを逸していたかもしれません。もし、夫婦がコロナショックに巻き込まれず、お互いのペースを守っていれば、離婚しない現実があったかと思うと筆者も口惜しい限りです。

 次に美鈴さん夫婦の場合、夫の女癖の悪さを考えると海外の赴任先でも別の女に手をつけていた可能性を否定できません。もし日本国内なら現地の興信所に依頼したり、近くに住む友達に探りを入れてもらったり、SNSを確認したりすることが可能ですが、海外で実行して不倫を特定するのは難易度が高いでしょう。そのため、美鈴さんと夫が別の国に暮らし続けていれば、不倫という不都合な現実を見ることなく、結婚生活を続けていたかもしれません。しかし、コロナ禍で近くに戻って来た夫の「本当の姿」を目の当りにし、見なくてもいいものを見てしまったため、結婚生活は終わりを迎えたのです。

 つまり、夫婦の距離が変化したときに問題が発生するのですが、感染対策により、変化の確率が高まり、夫婦に亀裂が生じやすくなったのがコロナ禍の傾向です。もし、コロナ以降に夫婦の関係が悪くなった場合は「夫婦の距離」を見直すのがいいでしょう。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/