豪華キャスト揃いだけど

 続いては『日本沈没-希望のひと-』。日本の沈没という未曾有の危機に、若き官僚たちが立ち向かっていく……。6話(11月21日)時点で平均視聴率が15・8%(世帯)と数字はとてもいいのだが、

(左から)『日本沈没-希望のひと-』に出演する小栗旬、松山ケンイチ、杏
(左から)『日本沈没-希望のひと-』に出演する小栗旬、松山ケンイチ、杏
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「お金をかけて、CGなども手間をかけて作っていると思うんですけど。小栗旬さん、杏さん、松山ケンイチさん、香川照之さん、仲村トオルさん……と主演クラスばかり。

 豪華なキャスト、すごいCG、ババーン! といった音楽の盛り上げ方。それがたぶん、古いんじゃないかな(笑)。その大袈裟さが、逆にチープな感じになっているというか。“これでもか!”と乗っけていく作品ほどしくじり率って高くて(笑)。薪をくべるほどに炎が小さくなっている感じはありますね。

 そして、うるさいBGMが好きじゃない視聴者は多い。見方はそれぞれ自分で考えて、自分で決めるのに、“ここはすごいところですよ!”と押しつけられる感に引いてしまいます。そんなふうに大袈裟に煽るわりには、登場人物たちがお酒の話をしていたりと、普通の日常を見せられている部分もあって、切迫感がない。私たちはそれこそ3・11やコロナなどで、本当の危機を知ってしまっている。なのにドラマの中の人たちはずいぶんのん気だなと感じ、白けます」(田幸さん)

 そして、吉田さんはこう見る。

「日曜劇場はやっぱり、日本の民放ドラマの中でいちばんお金をかけて大作を作れる枠のはず。でも、ディザースター(災害)ものとしては、映像がショボくないですか? 関東地方の一部がすでに沈没しましたけど、高層ビルが沈み、地面が割れて……となっても迫力がない。私が期待しすぎたのかな? Netflixで世界同時配信するくらいだったら、もっと頑張ろうよっていう気がしますね。

 そして、天海啓示(小栗旬)が裂け目に落ちて助けられていましたけど、“裂け目に落ちたシーン、撮らなかったんかい!”っていう(笑)。ブツ切れ感もあります。

 勝手な推測ですけど、今、軽石が問題になっているじゃないですか、福徳岡ノ場の海底火山の噴火による。まさに現実とリンクしますよね。体験したことがないことが起きている怖さがあると思うんです。あまりにリアルに作っちゃうとクレームが来たり、誰かのトラウマになってしまう懸念もある。だからキャストを危険なシーンにあまり絡めず、お茶を濁す感じのCGにあえてとどめているのかもしれないですね(笑)。

 代わりにたくさん描いているのが、官僚たちによる未来推進会議のシーン。“官僚同士、あんな仲良くやるわけないだろう”って思いますけど(笑)」

 ここまではぴたっと意見が一致していたが、2人の見解がわかれた作品も。

「『アバランチ』(月曜夜10時~カンテレ・フジテレビ系)は、実はいちばん期待してたんですけどね……」

 とは、吉田さん。3年前の事件によって警察を辞めた羽生誠一(綾野剛)。しかし山守美智代(木村佳乃)によって集められた“アバランチ”のメンバーとして日本の権力に挑んでいく。

月曜10時という新設枠。そして開始直前までいろんな情報を隠し、謎めいていて。監督(藤井道人)も映画畑の人ということで。一体、どれほどまでに新しいものを見せてくれるのかと期待値だけが上がってしまった。

 でも開けてみたら“これ、どっかで見たことありますねぇ”の寄せ集めでした。警察内部の話なんですが、復讐のためにみんなが動き出す……みたいな。前にカンテレでやっていた『DIVER-組対潜入班-』('20年)ですよね? 要は警察の中で一応、指示を受けてはやっているけれど本人たちは警察じゃない、そして巨悪を倒す、みたいな。まだ他にも、この手の作品はあった気がしますね。そして、悪玉のラスボスが渡部篤郎という抜け感もカンテレっぽい(笑)」

 ただキャストの中に嫌いな人物はいないと吉田さん。

「むしろ適材適所ですよ。そして、映像や音の入れ方なんかはカッコいい。ただ、最初にぶち上げたわりにねぇ(笑)。作り手が、あんまりドラマ見てないだろうなって気がしますよ。途中でエピソード0に戻る作品も、これまでいくらでもありましたし。これから第2部に突入していきますけど、それほどまでに新しく、素敵な仕掛けが待っているかは疑問ですね。まあ、どうなるかはわからないので最後まで見ますけど」

 一方、田幸さんが挙げたのは『真犯人フラグ』(日曜夜10時30分~日本テレビ系)と『婚姻届に判を捺しただけですが(ハンオシ)』(火曜夜10時~TBS系)。

 『真犯人フラグ』は相良凌介(西島秀俊)の妻(宮沢りえ)と子が失踪。その容疑が凌介に向けられてしまう。

「『真犯人フラグ』はどこかとっ散らかっていて、いかにも秋元康さんの企画作だなという感じです。もちろんキャッチーなうまさはあって。『あなたの番です』('19年)はヒットしましたし。放送中の『じゃない方の彼女』(月曜夜11時6分~テレビ東京系)も秋元康さんの企画作ですけど、こちらは男性のベタベタの妄想がてんこ盛り(笑)。でも、だからこそ、一定の視聴者に受け入れられるところもあると思うんです。

 でも、『真犯人フラグ』はSNSでの考察狙いが見え見えで。そして、役者さんを殺しちゃっている感じがするのも残念ですね。

 西島秀俊さんの主演ということで、楽しみにしていた人も多いはずなんですけど、この役だと西島さんの良さが出ていない。他にも芳根京子さん、桜井ユキさん、迫田孝也さん、柄本時生さんなど、芝居できる人たちをたくさん投入しているんですけど、なんだか生かされていない気がします」

  『ハンオシ』は、祖母の遺した借金を背負うことになった大加戸明葉(清野菜名)と、社会的メリットのために百瀬柊(坂口健太郎)が偽装結婚をする、というストーリー。

「いろいろと中途半端な印象があって。ヒロインの相手役がデリカシーのない男性というのも二番三番四番煎じ。“がっかり”というよりは、“やっぱり面白くなかった”という感じかもしれません。

 TBSの火曜夜10時のドラマは『恋はつづくよどこまでも(恋つづ)』('20年)が当たりすぎたせいで、以来ずっと“恋つづ病”にかかっている気がします。役者さんたちも、苦労しているように見えますね。まったく違う作品で挑んでみるなど一度、その呪いを解かないことには厳しいような気はします」

 もちろんドラマの見方は十人十色。そして最終回を迎えてみるまでは、どう転がるかはわからない。心揺さぶる今後の展開を期待しています!