男に溺れ、金に目がくらみ、欲望のまま犯罪に手を染めた女たち。人を騙し、“誰か”を殺めてしまった女たち。この世にはさまざまな「怖い女」が存在する。いったい、何が彼女たちをそうさせたのかーー。大きな事件から、あまり知られていない小さな事件まで。昭和から平成にかけておきた事件を“備忘録”として独自に取材をする『事件備忘録@中の人』による「怖い女」シリーズ、第1弾。
「犯人は実母」という衝撃
2006年4月、秋田県藤里町で起きた9歳の女児と、その2軒隣に住む7歳男児が殺害された児童連続殺害事件。その犯人が被害女児の母親であったことは、世間に強い衝撃を与えた。また、その母親が逮捕前から複数のメディアの取材攻勢を受け、容疑者でもないのにあたかも犯人であるかのような報道が行われたことでも話題となった。
その事件から半年後。
同じ秋田県内で、4歳の男児が殺害されて水路に遺棄されるという事件が起きた。そしてこちらの事件の犯人もまた、実母だった。
◆ ◆ ◆
2006年10月23日、秋田県大仙市の水路で男児の遺体が発見された。
その後の調べで、男児は近所に住む陽介ちゃん(仮名/当時4歳)と判明。陽介ちゃんは直前に行方がわからなくなったと実母が通報していたが、事件は最悪の事態となってしまった。
しかし、事件はさらに信じられない結末を用意していた。陽介ちゃんを殺害したとして、秋田県内在住の40代の男と、その交際相手だった陽介ちゃんの実母・美津子(仮名/当時31歳)が逮捕されたのだ。
裁判では、2人が車中で性行為に及ぼうとしたところを陽介ちゃんに邪魔されたことがきっかけで殺害に及んだという動機も明かされた。
そして、終始暴行を主導し、遺体の遺棄を実母である美津子にやらせたとし、交際相手の男は主犯として懲役16年の判決を受けた。
母親の美津子は反省の態度で裁判に臨んでおり、どんな判決も受け入れると話すなど真摯な態度が酌量され、懲役14年の判決が言い渡されている(その後確定)。
幼子を抱えたシングルマザーが結婚をチラつかされた挙句、男の言いなりになって盲目となり、わが子を殺める片棒を担いでしまった。裁判では概ねそのような解釈のもと判決が下されたわけだが、この2人の人となり、特に母親の美津子のそれまでを辿ると、にわかにその判断がぐらついてくる。現に、主犯と断じられた交際相手の男は捜査段階では認めたものの、起訴後は一貫して否認を貫いた。
男と女。鬼はどっちか。