テリー伊藤との出会い
「そのバーにテリー伊藤さんが来ていたんです。“最近テレビで見かけないけど、バラエティーに興味ある?”と誘われ、当時若者に人気だったテレ東系の『浅草橋ヤング洋品店』に出演することになりました」
人気企画『中華大戦争』などでブレイクした周富徳・周富輝兄弟など番組発のスターとともに、マジックとは関係のないロケに挑戦。
「マジック以外のバラエティーはやったことがないから、最初は何もできなかったですね。そんな僕を見かねてか、テリーさんが“テレビに出るならバカにならなきゃダメだよ!”とアドバイスをしてくれました。それで苦手な歌に挑戦したところ、喜んでもらえて。完璧なものを見せることだけが、視聴者を楽しませることではないんだなと、身をもって痛感しました」
これまでにない形でテレビに出るようになったところ、今度は日本テレビの有名プロデューサーから声がかかる。
「笑福亭鶴瓶さんが司会を務めていた『投稿!特ホウ王国』という番組で、Mr.マリックを逆さから読んだ栗間太澄(くりま・たすみ)という謎の郵便局員というキャラクターで出ることに。決めゼリフは“手力です!”だったり、セルフパロディをしたことがウケて、テレビの依頼がまた増えるように。顔面麻痺でテレビから消えそうになっていたところ、違うジャンルの人たちから声をかけてもらったことで、復活できるとは思っていませんでした」
一度は消えかけた彼に芸能界で大事なことを聞くと、言葉を噛みしめ、こう答えた。
「とにかく飽きられないことですね。僕の場合はバラエティー番組に出て、これまでとはまったく違うギャップを見せたからこそ、超魔術を知らない若い世代にもウケて、知ってもらえた。もし、自分にはバラエティーは無理だからとテリーさんの誘いを断っていたら、テレビの世界では淘汰されていたでしょうね」
現在はYouTubeでチャンネルを開設。ときにはネタ明かし動画も公開するほか、依頼があればネタ番組にも積極的に出演する。
「僕らの世代は初代・引田天功さんに憧れてマジシャンを目指す人も多かったですが、今の世代は特定のマジシャンに憧れる人は少ないように感じます。だからいろいろなことに挑戦して、“マジシャンになりたい!”という人を増やすことが自分の使命なのかなと。今はYouTubeなどでマジックのネタは簡単に見つかるけど、自分のモノとして習得するのはまた別。
若い世代に自分が持っているノウハウを伝えていくためにも、次世代のマジシャンの発掘や育成に力を入れていきたいと思っています。そして、人気タレントに負けないスター性のあるマジシャンが育ってくれたらうれしいですね」