聞けば、2週間前から同クリニックへ毎日、通っているという。

「昨日は夕方5時に来る予定やったんだけど、テレビを観とったらここが映ってとんでもないことになっとるでしょう。僕もあの時間に来とったら、危なかった。運がよかったというか、なんというか……」(同・男性、以下同)

 なぜここまで多くの被害者が出てしまったのか。それは出火した場所に原因があるという。

あそこで出火したら逃げられない

「エレベーターを上がると、非常階段が隣り合わせにあって、その奥にクリニックの入口があるんだけど、そのあたりにストーブがあったと思う。

 だから、そこで火をつけられたら、その火を突き抜けていかない限り、脱出はできんしょう。炎を避けようと、反対の奥のどん詰まりのほうに逃げても、出口はない。だから、こんな悲惨なことになったんでしょう」

 パニック障害を患っているこの男性は、いくつかの病院を転々として、ようやく同クリニックに辿り着いたという。

「他の病院では、医者とよくケンカしたりしてたからねぇ。この手の病気は、先生や病院との相性が合わないとダメなんですよ」

 彼にとって、西澤院長はとても優しくて、いい先生だった。

「だいたい1回、5~10分の診療時間。僕が昨日あった出来事をずーっと話して、それを院長先生がうん、うんと言いながら優しく聞いてくれていた」

 しかし、前述した通り、相性が合わないと、

「病気がなかなかよくならないことを病院のせいにしてしまう患者もいて……。なかには怒鳴ったり、暴れたりする人もよく見かける。

 僕はこのクリニックに通い始めてまだ日が浅くて、顔見知りの患者さんもまだおらんから、火をつけたのが誰なのかはわからん。もしかしたら、そういった逆恨みみたいなもんがあったのかもしれんね」

 この男性はたまたま難を免れたが、すでに多数の命が奪われ、まだ生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている人もいる。凶行の背景に何があったのか、事件の真相究明が待たれる。