疲労困憊、死亡事故も
これは過労死レベルをはるかに超える時間。労働問題に詳しい代々木総合法律事務所の鷲見賢一郎弁護士も憤る。
「過重労働なんてレベルじゃないですよ。完全に労働基準法違反ですよ。150時間働かされている証明は必要ですが、労働基準監督署に申告すれば調査に立ち入り、会社側に指導をします。場合によっては検察に送って刑罰対象にしてもおかしくない。こうした状況は改善しないとだめです」
当然、スタッフは疲労困憊。居眠り運転で事故を起こすケースは後を絶たない。
「事故を隠す管理職もおります。高速道路で工事車両に突っ込んだり、物損だけでなく、人身事故を起こし、亡くなった人もいます」(前出・組合関係者、以下同)
24歳の男性社員は長時間の深夜勤務を終え、バイクで帰宅中に疲労から居眠り運転。電柱にぶつかる単独事故で亡くなった。21歳の助手の男性はトラックのバック誘導中に車と電柱に挟まれて亡くなった。踏切で立ち往生して列車と衝突した接触事故も発生するなど同様の事故が何件も起きている。
「特に残業が長いのはトラックのドライバーと主任など中間管理職と営業職。営業職は業務外でも対応しろ、と言われていて休日でも深夜でも業務用携帯で仕事をしている。“見えない鎖につながれている”なんていう人もいます。
“仕事が忙しくて夫が帰ってこない”と心配する従業員家族も少なくありません」
必死で長時間、働かざるをえない理由もある。
「給与は6万~8万円の固定給+歩合です。1日の引っ越し代金の中から数パーセントが上乗せされるシステムなんです。そこにさまざまな手当がプラスされ、支給されます。どれだけ件数をこなすかで給与は左右されます。
それに入社時、残業代は1分単位でつくと説明されていましたが結局15分単位。これも労働基準法違反ですよね。残業手当や深夜手当などの計算方法も不明瞭で支社や個人によってバラバラ」(前出・大森さん、以下同)
年2回のボーナスも支給されるが金額は1回に10万円に満たない。おまけに顧客の荷物を破損させたり、事故を起こした場合には減額され、積み重なるとボーナスの支給自体がなくなるという。
「みんな給料を取るか、自分の時間を取るかの選択を迫られているんです。会社はどんどん低価格化を進めており、そうなると従業員の給与も必然的に減るんです。人手不足で数もこなさないと手取りで20万円ももらえません。勤務中に休憩時間を削ってでも1件でも多く現場を入れようとするのは珍しいことじゃない」
前出の鷲見弁護士が解説。
「一般的に基本給6万~8万というのは労働基準法27条に違反する疑いがあります。厚生労働省の解釈で基本給は、“少なくとも平均賃金の6割程度を補償することが妥当”と言っています。また、保障給がない場合は刑罰対象になります。保障給部分を上げるように組合で運動していくことが重要」