では、なぜ神田と聖子は、あえて会見の場に立つことを選んだのか。多くの昭和スターを取材してきた、芸能ジャーナリスト・佐々木博之氏は「ひとつ目として、マスコミの取材を抑えるためでしょう」と解説する。
「昨年に岡江久美子さんが亡くなった時も、夫の大和田獏さんが遺骨を抱えたまま気丈に取材に応じました。マスコミの倫理観も問われるようになった近年では、かつてのような強引なやり口の取材も少なくなりましたが、それでもひと言でも“生の声”をとりにいくのは記者として当然のこと。
特に母親の聖子さん。当初、事務所を通じてコメントを出しましたが、彼女の“肉声”を求める取材攻勢が始まることは目に見えていました。神田(正輝)さんが“今はそっとして”と話したように、おそらくは聖子さんを守るためにも、また今なお続く沙也加さん急逝の原因追及を止めるためにも、“会見をする代わりに後追いはやめて”と制したのだと思います」
時代の変化によって、特に若い芸能人は仕事とプライベートを明確に分けたがる傾向にあり、結婚や出産、はたまた離婚報告を事務所HP、または自身のツイッターやインスタグラムなどのSNSで発表することが多い。ところが、その“私”の部分を隠すほどにマスコミからの取材、追及に拍車がかかるという。
会見も芸能人の仕事だった
「昔ながらの芸能人は、マスコミと“持ちつ持たれつ”の関係を築いていました」と佐々木氏が話すように、トップスターの神田と聖子にとってマスコミは人生について回る、切れない存在だった。
「いい時も悪い時もマスコミに注目されるのが芸能人で、さらに神田さんや聖子さんは“スターはそういうもの”という意識があるのでしょう。芸能人にとって、結婚時はもちろん、子どもが生まれた時には親子3人で絵に収まることも多々あり、離婚時にはそれぞれが取材に応じたりと、会見もいわば仕事の一つでした。
テレビ前のファンは普段の生活、プライベートも知りたがるもので、それを承知で応えるのもスターの務めであり、ひとつのエンターテイメントであると。そして伝えるのがマスコミの役目と理解している。つまりは沙也加さんのファンのためにも、親として会見を開くべきと考えたのだと思います」
神田と聖子による会見翌日、フジテレビ系『めざまし8』MCの谷原章介は、沙也加さんと両親による会見をひととおり伝えたあとに自身の意向なのか、それとも番組としての方針なのか、
《このたびは騒ぎ立てて本当に申し訳ありませんでした。(略)今日で、この神田(沙也加)さんのことについての報道は『めざまし8』では、一線を引いて終わらせたいと思います。本当に失礼いたしました》
と、深々と頭を下げて、今後は沙也加さんに関する放送をしないことを誓った。神田と聖子の会見の意図を汲んだ末のコメントだったのだろう。