“考え方”にも変化が
また、ここ2年続いたコロナ禍もこの動きに拍車をかけているという。
「感染症対策で、実家に帰りたくても帰れない時期が続きました。そういった背景も、お仏壇を破棄する決断の後押しになっていると思います」
破棄した仏壇やお墓の代わりに、自宅でコンパクトにできる手元供養。また、お骨を自宅に置くということについても、世間の意識が変わってきていると井本さんは感じており、こう続ける。
「“埋葬することができないくらいの悲しみで、お骨を自宅で持っていたけど、そのことを人に言うことができなかった”、というお客さまがたくさんいらっしゃいました。
昔は伝統的な宗教観ありきで、例えば“亡くなったらお骨はお墓に入れる”という考えが普通。でもこれまでになかったデザインの仏具で祀ったり、お骨を手元に置いたりしてもいいんだ、と考える方が増えてきていると感じます」
今まで仏壇を置く場所は仏間という、ある種“特別な空間”だったが、手元供養では本棚の横や窓際、リビングの机の上などに置かれており、生活の一部として溶け込んでいるという。
「ミニ骨壷も、もともと、火葬場からいただく白い陶器の骨壷だと地味すぎるというご遺族の声からはじまったもの。外国ではこういった華やかな骨壷に入れることが一般的なんです」
伝統的な仏壇から、モダンなデザインのものへーー。宗教に捉われない、新しい供養の方法。これから先、広がっていくのだろうか?
「決して伝統的な方法を否定しているわけではありません。お墓を維持すること自体が難しくなってきた時代、故人をどう偲べばいいのか、どういう方法ならできるのか、ということで生み出されたと思います。
ですから、これまでの供養の方法がなくなるのではなく、手元供養というスタイルが共存していくと思います。どちらも故人に対する思いがあってのことですから」