長引くコロナ禍のもと、子どもたちが強いストレスにさらされている。その結果、いじめや自殺として異変が現れるケースもあれば、不登校という形でSOSが出される場合もある。文部科学省によると、全国の小中学校で不登校の児童生徒数は2020年度に19万人を超え、過去最多となった(国立、私立を含む)。
不登校が増えた背景として、'20年3月の一斉休校措置から続く影響を指摘するのは、NPO法人『フリースペースたまりば』の代表・西野博之さんだ。神奈川県川崎市を拠点に、コロナ以前から子どもたちに安心して過ごせる居場所を提供してきた。
「最初に緊急事態宣言が出された'20年4月当時、学校が閉まっていました。そこへ新入学や進級の時期が重なった。一斉休校が明けてからも、友達がいないという子どもが少なくない。子どもたちにとってみれば学校がおもしろくないんです。常にマスクをしなければならず、声を出してはいけないと注意される。給食も黙って食べる“黙食”。友達と遊ぶときも、触れ合えません」(西野さん、以下同)
外出自粛が叫ばれるなかで家庭環境も様変わりした。
リモートワークで増えた夫婦ゲンカ
「リモートワークになったことで父親が家にいるようになりました。もともと不登校の子がいる家庭では、父親が仕事に行く中で不登校を気づかれずにすんだ。ところが父親が家にいると“朝、起きない”“ゲームばかりしている”子どもの姿を見て、“おまえの態度は何だ”と怒鳴ったりするわけです。さらに矛先を母親に向け、“おまえが甘やかすからだ”などと罵倒するようなケースが増えました」
混乱し、不安を感じていたのは大人たちも同じ。飲食業や宿泊業を中心に失職したり、休業に追い込まれた人もいた。親のストレスがたまると家庭内で緊張が走りやすい。
「子ども1人ではなかなか勉強しないし、オンライン授業への対応は難しいので、親が隣にいることが多く、気が抜けない。もっと“勉強しろ”と言われる。暴言を吐かれたり、手を出されることもある。そのためコロナ禍であっても、フリースペースを閉めないことにしたんです」