巧妙な手口からは「逃れられない…」
井出先生の体験について、国際ロマンス詐欺ジャーナリストの新川てるえさんがこう解説する。
「典型的な国際ロマンス詐欺の手口ですね。しかも、アフリカ系のナイジェリアやガーナの犯人に多い手口です。あの国の多くの人たちは、国の施策でITの技術を持ってはいるのですが、仕事がないため、ごく一部の人が当たると大きく稼げるロマンス詐欺に手を出すのです。
画像や動画の加工はお手のものですし、人の心理を操る方法など詐欺のやり方を教えている学校もあるほどです。彼らのやり口は実に巧妙ですから、だまされた人をむやみに責めることはできません」
凶悪な詐欺師という“羅刹”に、地獄へ突き落とされた井出先生。深い悲しみと苦しみがまだ残る。今、何を思うのか。
「だまされたのは本当につらい経験でしたが、子どもたちが許してくれ、『お母さんは女手ひとつで私たちを必死に育ててくれたのだから』と、警察へ付き添ってくれたり借金返済などで支えになってくれていることに救われています。
そして今の私の誇りは、だまされている間も仕事だけは完ぺきにこなしてきたということです。ファンを裏切りたくない。この経験を漫画や小説に書いて、みなさんが同じ被害を受けないように警鐘を鳴らしていきたいです」
前出の新川さんはこう続ける。
「この手の詐欺は、人の優しさにつけ込んでその人をコントロールしていく、本当に卑劣なものです。かつ海外からやりとりする場合がほとんどなので、日本の警察の捜査にも限界があります。
井出さんのように、最初は相手のためを思ってなのですが、そのうちつぎ込んだお金を少しでも取り戻そうと必死になるため、要求を断ることができなくなってしまうのです。SNSで親しくなりたいとやってくる外国人は、まず詐欺目的と考えたほうがよいでしょう」
“羅刹”の餌食になる人たちがいなくなることを願うばかりだ。
「全告白!国際ロマンス詐欺〜漫画家が陥った“偽りの恋”」
初回放送日: 2022年1月23日(日)23:00-23:49 @NHK BS-1
https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/episode/te/3GJZMGYG5L/
(取材・文/木原みぎわ)