新幹線の車内と同等の換気力
風評被害が広まる中、カラオケボックスをむやみに危険視するのは違うのではないか─そんな疑問を覚えたと話すのは、感染症を専門とする医学博士・吉田友昭さんだ。
「海外の発生事例を調べると、合唱でのクラスターなどがあった。さまざまな論文を読んだ結果、新型コロナはエアロゾル感染(空気感染)の可能性が高く、最も重要視すべきは換気とマスクの着用という認識に至りました。
カラオケボックスはシステム的に換気がしっかりしているので、学術的な関心事として、私のほうから全国カラオケ事業者協会事務局に連絡をとり、検証をさせてくれないかと申し入れました」
吉田さんは、スモークを使った実証実験を開始。カラオケボックスの個室がどのように換気されているのかデータを集めたという。その結果、「優れた給排気システムを持ち、新幹線並みの換気能力があることがわかりました」。
先のエクシング広報担当・島村さんが説明する。
「カラオケルームの換気は、防音のため窓やドアを開けて換気ができない分、建築基準法上、窓がある空間よりも厳しい換気性能を求められています。JOYSOUND直営店では全室およそ6~9分ごとに室内の空気が入れ替わるようになっています」
カラオケボックスでは飲食や喫煙も可能だ。だが、次のグループが入室した際、においが残っているというわけにはいかない。そのため、建築基準法の基準の約3~4・5倍、新幹線に匹敵する換気が実現されているという。
「日本には建築物衛生法という法律があり、二酸化炭素の室内濃度を1000ppm以下に抑えなければいけません。'03年に建築基準法が改正された際、その年以降に設計された建物は、かなり速い換気が要求されるようになりました。こういった換気に対する基準を持つ法律は、世界でもあまり存在しません。むしろ欧州では、エネルギーの節約のために気密性を守るという法律が多い」(吉田さん)
つまり、欧州にはもともと換気が悪く3密になりやすい建物が多いというから驚きだ。こうした要因もあって、日本とは比較にならない感染者数を記録している可能性があると指摘する。
吉田さんの実証実験のエビデンスをもとに、片岡さんは「業界全体で自発的に取り組みを進めてきた」と話す。
「政府の業種別ガイドラインがあるのですが、付記されている『定員の半分にしましょう』、『間隔は空けましょう』といったことだけでは浸透しないし、カラオケボックスは安全という認識にいたらない。また、カラオケといっても、ボックス、カラオケ喫茶、スナック……という具合に、いろいろな歌唱の場があります」(片岡さん)