日々の生活の延長線上にフェミニズムを考察する『もう空気なんて読まない』(河出書房新社刊)は、#KuToo発信者として活動する石川優実の書き下ろしエッセイ。その刊行記念のイベントが2021年12月某日、東京・下北沢の『本屋B&B』で開催された。プロインタビュアー・吉田豪との対談は、穏やかな雰囲気ながらも本質を突くトークで大好評を得た。その模様を再録する。2人が見つめるフェミニズムとは――?
石川優実(いしかわ・ゆみ)
1987年生まれ。「#KuToo」署名発信者、アクティビスト。高校時代から芸能活動を開始。2014年、映画『女の穴』で初主演。2017年に#MeToo、2019年に#KuTooを展開。著書に『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館)、責任編集を務めた『エトセトラVOL・4特集 女性運動とバックラッシュ』(エトセトラブックス)。エッセイ『もう空気なんて読まない』(河出書房新社)を上梓。
吉田豪(よしだ・ごう)
1970年生まれ。書評家、プロインタビュアー。徹底した事前取材を元にした有名人インタビューで知られ、取材対象についての知識は本人をしのぐと言われる。著書に『男気万字固め』(エンターブレイン)のほか、『超・人間コク宝』(コアマガジン)、『続々聞き出す力』(日本文芸社)など著書多数。最新刊は『証言モーヲタ ~彼らが熱く狂っていた時代』(白夜書房)。
「Twitter」と「怒り」の相性の悪さ
吉田 いきなりですけど、Twitterは今後どういうふうにされていくんですか?
石川 Twitterはやめました。
吉田 そうらしいですけど、実は今回の本で「Twitterはやめない」と宣言していたんですよね。
石川 本の発売直後に、Twitterをやめようと決めました。「あ、でも本には続けるって書いたんだった」と気づいたんですけど、人間なんて思うことは変わっていくわけですし……。復活するつもりもないですね。
ただ、Twitterで誹謗中傷を受けたことで今も裁判をしているので、もし何か必要になるときのためにアカウントが残るようにはしています。やめるきっかけが、コスメブランドの『LUSH』が2021年11月にSNSからサインアウトするアクションを起こしたことなんですよ。
吉田 やめて正解だと思いますよ。ボクがTwitterをやっていて痛感するのは、「怒り」との相性の悪さです。どんなに正しくても、怒っているだけでネガティブな評価をされてしまう。怒っている人と冷静に揚げ足を取っている人だったら、怒っている人が悪いんだな、痛いところがあるから感情的になってるんだな、なんか怖いなっていう雑な解釈をされちゃうじゃないですか。
石川 そういう印象操作を、Twitterってやりやすいんですよね。それまですごく冷静だったとしても、一瞬だけ、ちょっと強く言ったところが取り上げられるんですよね。豪さんはTwitterやめないんですか?
吉田 宣伝もあるのでやめないです。ただ、淡々とやり続けているボクでも面倒くさいことが増えてきましたね。まあ、昔ほどのワクワクした感じはないですよ。
石川 最初のころは、ワクワクしてたんですね。
吉田 10年ぐらい前のTwitterって、論争しても仲直りするパターンがあったんですよ。ずっとやりとりをして、それでなんとなくお互い悪い感情がなくなっていくようなことが最近はまったくなくなって、どんどん殺伐としてきて。そりゃあ消耗しますよね。Twitterで知名度は上がったけれども、すり減るようなことも増えてきているとは思います。
石川 Twitterをやめた時点で、フォロワーが4万人近くいました。宣伝の場としては、ものすごい財産だったと思うんです。約10年間やっていましたから。グラビアアイドル時代から1万人くらいのフォロワーがいて、長い時間をかけて続けてきたものではあったので、ちょっと惜しい気持ちはあったんですけど。なんか、バズるということに意味を持たせ過ぎる社会があると思い始めたんです。バズったことが絶対に正しいなんてことはないじゃないですか。そこに私は、もう固執する必要はないかなって思って。