一方、後者は山田邦子の冠番組で、テーマ曲にKANの『愛は勝つ』(1990年)や大事MANブラザーズバンドの『それが大事』(1991年)が使われ、爆発的にヒットした。どちらも年をまたぐかたちで、オリコン1位を独走。つまり、2年連続して年末年始に一発屋ソングが流れまくったわけだ。
こちらは「イカ天」系とは逆に、万人受けするポジティブなメッセージが売り。ただ、それだけでやっていけるほど芸能界も人生も甘くない。そこがわかっていたのか『愛は勝つ』のカップリングは『それでもふられてしまう男(やつ)』という曲だった。
一発でも当てるのはすごい
ほかに、沢田知可子の『会いたい』(1990年)やJAYWALKの『何も言えなくて…夏』(1991年)平松愛理の『部屋とYシャツと私』(1992年)といった一発ヒットが誕生したが、このあたりからJポップの時代が本格化する。
「イカ天」に出た際、なぜか酷評されて落とされたGLAYをはじめ、長く安定して売れるアーティストが続々と登場。一発屋が生まれにくくなっていくわけだ。
ところで、現在放送中のドラマ『ファイトソング』(TBS系)はヒロインが一発屋シンガーに恋をする話。そのシンガーは「一発屋」について「世界でいちばん嫌いな言葉だ」などと言ったりする。
とはいえ、ほとんどの人がデビューしても何も残せずに消えていくなか、一発でも当てるというのはやっぱりすごい。一発屋もまた、勝ち組なのだ。
寄稿:宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)