松竹の姿勢に不信感

 これまでの慣例では、團十郎の襲名披露公演は5月に開催。共演者の手配や準備を考慮すれば、すでに今年の開催は絶望的ともいえる。

コロナによる人数制限などを受け入れれば、公演自体は今年でも開催できるでしょう。しかし松竹としては、当初見込んでいていたような莫大な興行収益を逃すのはあまりにも惜しいので、いまだ踏み切れていません。海老蔵さんは、そんなどっちつかずな松竹の姿勢に不信感を募らせているんです」(成田屋に近しい人)

 彼には悠長に待てない理由もある。

「娘の市川ぼたんちゃんの年齢ですよ。海老蔵さんは襲名披露の場に親子3人そろうのが夢ですからね。'20年に行うはずだった襲名披露公演でも共演する予定でしたが、当時8歳だった彼女が今では10歳。まもなく“女人禁制”という慣習に触れるおそれがあります」(松竹関係者)

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 習わしとして歌舞伎の舞台に立てるのは男性のみ。女性は思春期を迎える前までなら出演が認められているという。

'93年に、松本白鸚さんの娘である松たか子さんが『人情噺文七元結』という演目で歌舞伎座に立ちましたが、女優デビュー目前だった16歳の彼女を売り出すにあたっての1回きりの特例。それでも、白鸚さんは周囲の説得に尽力したそうです。ほかにもいくつか前例はありますが、女性が歌舞伎の舞台に立つのは難しいのです」(同・松竹関係者)

 歌舞伎評論家の中村達史さんは、女人禁制にまつわる歴史と実情を語ってくれた。

「歌舞伎は江戸幕府が女性を舞台に立たせることを禁止したことで“男性が女性を演じるにはどうすればいいのか。相手を務める男性は、どう演じればいいのか”と模索したことから発展したといえます。女性が自由に歌舞伎の舞台に立てるようになれば、歌舞伎の表現を根本的に見直さなければならないでしょう」