甘やかされてきた東出昌大
ただ、こういう男性はえてして誰にでも甘えてしまう。あの会見で注目された「杏と唐田、どっちが好き?」という質問への回答もそうだ。しばらく考えたあと、彼はこう言った。
「お相手のこともあるので、また、私の心のうちを今ここでしゃべることは、妻を傷つけることになると思いますので、申し訳ありませんがお答えできません」
これはどちらにも気を使っているようで、結局、どちらにもいい顔をしたいだけに見える。両方に許してもらえたら、という甘えだ。
モデル時代に東出と出会い、朝ドラで再会して恋におちた杏も、子どもができれば夫まで甘やかすわけにはいかない。一方、東出は甘えられる女性を外に求めたのだろう。そんな構図が見えたことで、世の女性は彼を甘やかしがいのある男だと感じなくなったのではないか。
とはいえ、この甘えん坊キャラが役者業にはプラスにも働いてきた。代表作のひとつである『コンフィデンスマンJP』シリーズでの「ボクちゃん」役はその典型だ。
詐欺師だが、リーダー格のダー子(長澤まさみ)からは騙されまくる役。彼はこの役について「駄目なヤツ」と評しつつ「ただ、僕自身に結構似ているとも言われて、いいのか悪いのか(笑)」と語っている。
これは不倫発覚前年の発言で、当時はどこか憎めない駄目なヤツが似合っていた。しかし、今では憎まれるだけの駄目なヤツになってしまった印象すら受ける。
彼を孫のように可愛がっていたであろう社長に見放された「ボクちゃん俳優」東出。私生活はともかく、仕事上で甘えさせてくれる人ははたして見つかるだろうか。
PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)