【4】明るいのにまぶしくない工夫
リニューアル工事後、都民から多く寄せられたのが「ツリーのてっぺんが明るくなってる!」という声。アンテナ設備があるツリーの先端部分は「ゲイン塔」と呼ばれ、地上497mから630mの部分にあたる。
「新たに設置した347台の照明機器のうち、179台をゲイン塔に設置しました。従来に比べて光が均一に照射され、ゲイン塔自体が発光して見えるようになりました」
ゲイン塔を明るく照らしつつ、かつ遠くからも見えやすくするには、単に光量をアップさせればいいわけではない。光がムダに拡散する光漏れをすることなく、いかに効率よく配光制御ができるかがカギとなる。そこで採用されたのが、超狭角のピンスポット照明器具だ。
「7度という超狭角の配光を実現する照明器具、ダイナシューターです。LEDに2枚のレンズを組み合わせ、光漏れの少ない超狭角のスポット光が投影できるようになりました。これをゲイン塔の最頂部の630mに設置しました」
以前は暗く見えがちだったゲイン塔部分が、今ではくっきり。ツリーの高さがより強調されるライトアップとなった。明るさが向上したぶん、心配になるのが周辺住民への影響。特に都市部では「光害」が問題になることが多いが、この対策にも実はダイナシューターの性能が役立っている。
東京スカイツリーを間近で見たことがある人は、タワーが外に放つ光よりも、タワーそのものを光らせる間接照明のやわらかい光のほうがメインであることに気づくだろう。
「本工事の時点から光害には配慮しており、タワーは間接照明でのみ照らしています。リニューアル工事でゲイン塔の輝度をアップした際も、遠くからよく見え、逆に近くからは見えにくい配光の照明器具を採用しています」
地上630m地点のゲイン塔最頂部にあるLED照明器具は、遠くからよく見えるよう外向きの照明となっている。ただし、ダイナシューターの超狭角ピンスポット光は18km先をターゲットとしているため、近くからはまぶしさを感じない。
例えばコンサートのステージ上でアーティストに明るいスポットライトが当てられていても、その周辺は暗く、光の影響を受けないのと同じ理屈だ。
本工事からリニューアル工事までの7年間で、色の再現性、光量などLED照明器具の性能は格段に進歩した。ツリー周辺の光害という問題にも配慮しつつ、遠くからの視認性は向上させるという相反する難題にも、最新の技術で見事に応えたかたちだ。