同協会では40年ほど前から藁人形の通信販売も行う。

「依頼者の代行で丑の刻参りをしていますが、実際に自分でも丑の刻参りをしたい、という人もいます」

SNSの普及で安易に呪いに頼る人が急増

 藁人形を買い求めるリピーターもいて、半年に1回のペースで購入する人も。

「セットで1万円ですが、藁人形のほか、内容はその人のお願いの内容によって変えています。どんなお願いをしたいのか、相談しながら決めさせてもらいます。かつては自分で呪いの言葉を唱えながら藁人形を作りました。人形には魂が宿りますから、作る工程が大事です」

メルカリにも売られていた「わら人形」
メルカリにも売られていた「わら人形」
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 呪いの成就には個人差があるという。

「大切なのは気持ち。丑の刻参りは作法もありますが、本当の作法どおりではとてもお参りはできません。どんなに難しくてもやる、という願いかどうかが問われているんです。最低限できることをし、願いへの強い気持ちがある人だけ臨んでください、というのが呪いです」

 そのため、丑の刻参りは神社に行かなくても自宅でリモートでしても問題はないそう。

「作法を間違えると怖い目に遭うと思っている方も多いと聞きますが、それはありません。人を助けてくれるのが神様。失礼はダメですが一生懸命祈る人に対して、作法で怒るような心の狭さは持たないんですよ」

 これまでは顔見知りからされて困っていることの最後の解決手段とし、追い詰められた人が駆け込んでくることが多かった。最近ではネット社会によるものが目立ち、如月さんら呪術師たちも困惑する事態が増えている。

「この子が嫌いだから、とかSNS上で見たこともない人を呪ってほしいとか、そんな呪いの依頼が後を絶ちません。顔が見えない相手でも、悪意や気に入らないことがあったら安易に呪いに頼ろうとしている人が増えていると思います。特に若い人は呪いをゲームのように簡単に考えている人が多い印象です」

 中には一方的にメールで呪い代行を依頼してくるケースも増えている。

 さらにはネット上で誹謗中傷を受けている被害者からの相談も相次いでいる。

「特定されないことをいいことにネット上で誹謗中傷を繰り返す人もいますよね。本来は名前や顔写真などが呪いの儀式には必要なのですが誹謗中傷を繰り返す、相手のハンドルネームやアドレスだけでお参りすることもあります」

 如月さんは呪いの依頼を通し、ネットの世界には特に悪意があふれていることを実感していると警鐘を鳴らす。

 同協会では呪いの代行依頼や藁人形購入希望者からの問い合わせがあると必ずなぜ呪いを行うのか、話をする。

「もう30年、40年の付き合いになる人もたくさんいます。相談内容によっては呪い代行を断ったり、藁人形の販売をしないこともあります。呪いの前に自分が変わることも必要です。どんなに頑張ってもできないことを最後にお願いするのが呪いです」


お話を聞いたのは
日本呪術協会(www.noroi.net)50年以上の歴史がある呪術師の集団。会員は全国におり、現在は20名ほど。藁人形の販売や丑の刻参り、呪いの代行のほか各種祈祷や相談などにも応じてくれる。