芽が出る人の特徴

 佐久間のつくる番組では、三四郎EXIT朝日奈央など、出演を機にブレイクしたタレントも多い。どのようにして、芽が出る人を見抜いているのか。著書には《俺、こんなもんじゃねえぞという顔をしている人》とあるが……。

「“まだこの位置にいるな、もっと上にいけるのに”という、自分に対するイライラがある人がブレイクすると思います」

 これまででいちばん“イライラ”していたのはあの人。

劇団ひとり
劇団ひとり

劇団ひとりですね。おもしろいことしかしたくないし、誰も見たことないような結果を出したいという気持ちがあって、それができない自分に対して、常にイライラしていたイメージがあります。“俺は絶対この場所で立ち止まらないぞ”という顔をしていました」

 最近では?

「やっぱりCreepy Nutsじゃない。特に(DJ)松永。HIP HOPという文化や自分たちの音楽は、もっと広い支持を受けられるのに“まだここなんだ、悔しい”という気持ちがあったような感じがします。それになにより曲がいいし、出会ったころからおもしろいなと思っていました。あとは、『ダウ90000』の蓮見(翔)くんかな」
昨年の『M-1グランプリ』準々決勝で敗退した新進のユニットまでチェックしているとは驚きだが、多くのコンテンツをチェックすることには理由がある。

「あまり自分のことを信用していないので。センスは錆びますし、ずっと世の中に通用するものがつくれるとも思っていないので、受け手としての自分がズレないようにしたいと思っています。それが古くなってしまうと、つくるものが時代と合わない表現になったり、誰かを傷つけるものになってしまったりしてしまうので。普段の自分がハラスメントに鈍感なのに、つくるときだけ取り繕うのは無理だなと思って。そのために、好きなものやおもしろいものは見続けています」

 考えが凝り固まらないように、こんなことも。

「おもしろい価値観を持っていると思う人のブログをフォルダにまとめて、その中の3人が褒めている作品は、自分のレーダーに引っかかっていなくても見ると決めているんですよ。それがすごく役に立っていますね。そういう偶然の出会いが、今までの人生に役立ってきましたし、これからもそんな気がします」

星野源
星野源

 さらに、あのアーティストのレーダーも信頼している。

「星野源さんがたまにおもしろかったものを教えてくれるのですが、自分が知らないものでも星野さんのおすすめは必ずチェックして感想を送っています。最近は『チ。』というマンガを勧めてもらいました。星野さんが勧めてくださるものはだいたいハズレがないのですごいなと思いますね。逆に星野さんのレーダーに引っかからなさそうなものを僕からおすすめすることもあります」

 常に自らのセンスを磨き続けている佐久間。これから目指すところは?

「“自分の人生が楽しくなること”ですかね。エンタメのいちファンとして“世の中におもしろいものが増えたらいいな”と思っていて。受け手の目線で“この人が売れたらいいな”“こんなに苦労してる人にはもっとおもしろくなってほしいな”と。そして、僕が番組をつくることで、自分の好きなものが天下をとったり、広く伝わったりするきっかけになればいいなと思っています

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