動物型にアルファベットの刻印でお馴染み、ギンビスの薄焼きビスケット『たべっ子どうぶつ』。発売は1978年。以来、伝統の素材と製法を大切に、変わることない味わいで世代を超え長く愛され続けてきた。さらに近年はファン層が広がり、子どもはもちろん若者たちの間で新たなブームが起きているという。その理由は何なのか。まずは45年近くに及ぶ長い歴史を振り返り、ロングセラーを支える魅力のルーツを探ってみたい。
実は『たべっ子どうぶつ』には前身となった商品がある。1969年発売の『動物四十七士』で、ネーミング通り47種類のどうぶつたちがビスケットにかたどられていた。
「『動物四十七士』は厚焼きビスケットで、昔ながらの素朴な味わいで支持をいただいていました。さらにより多くの方に親しんでもらえるよう、食べやすい薄焼きのビスケットを作ろうと考えたのが『たべっ子どうぶつ』開発のきっかけになりました」
と話すのは、ギンビス広報の吉村萌子さん。
再現できなかった意外な動物
薄焼きに徹底してこだわり、配合や製法を調整し試作を重ねた。結果『動物四十七士』の約半分ほどの厚さの薄焼きを実現し、サクサク軽い食感を生み出すことに成功。一方、薄焼きを追求したことで、どうしても再現できなかった意外などうぶつがある。
「『たべっ子どうぶつ』は全46種類ですが、これは『動物四十七士』からコアラを除いた数。あの特長的な耳を薄焼きビスケットにするのは難しく、泣く泣く断念したという経緯がありました。そのほかワニやキリンなど長細いフォルムのどうぶつは薄焼きにするとどうしても割れてしまうため加えることができず、かわりにパッケージにイラストとして描いています」
今ではギンビスの看板アイテムであり同社を代表する一大ブランドに成長した『たべっ子どうぶつ』だが、発売当初の売れ行きはあまり芳しくなかったそう。
「売り場で目立つよう当時斬新だったピンクのパッケージを採用したところ、派手な印象となり当初は苦戦を迫られたんです。ただ次第にテレビCMの効果や美味しさが口コミで広がり、徐々にヒットしていきました」
ギンビスは「独自性」を企業理念にしており、食品にはあまりなかったピンクのパッケージカラーをあえて採用したのもそのひとつ。またアルファベットの刻印は『動物四十七士』から続くスタイルで、当時としては画期的なアイデアだった。
「創業者の宮本芳郎が海外に強い関心があったことや、第2外国語として英語への注目が集まっていた時代背景を踏まえての導入でした。食べて美味しいだけでなく、コミュニケーションにもなるビスケットとして、楽しさや癒しなど、より次元の高い価値を提供したいという考えがその根底ありました」