『マリウポリの街を復興するには“卑劣なモンスター”であるウクライナの捕虜を使うべき』(4月14日テレビ番組で)
『YouTubeを禁止すべきです。そうしないとそこで行われている(反ロシア的な)言動に対抗できない。すべての言論を検閲し、私たち自身のものに置き換えるべきです。10年以上前から(言論の自由が制限された)中国のようになることを夢見ています』(4月17日テレビ番組で)
『(ウクライナとの戦争がエスカレートし)核戦争によってすべてが終わる可能性は高い。恐怖だが、そういうものだと考えている。私たちは皆、いつか死ぬのだ』(4月26日、テレビ番組で)
シモニャン氏はプーチン大統領のおぼえもめでたく、直接勲章を授与された経歴もある。ウクライナ侵攻を支持する観衆がスタジアムを埋め尽くす光景で衝撃を与えた、ロシアによるクリミア併合8周年イベント(3月18日)でもシモニャン氏はスピーチしており、「ロシアの兵士はウクライナで“悪霊のような汚れたもの”と戦っている」と鼓舞している。
シモニャン氏「核戦争がしたいのか?」
極め付きはこちらだ。4月末、ロシア領内のベルゴロド市で爆発があったことを受けてのツイッターへの投稿。こちらの爆発の原因ははっきりとしていないが、おそらくシモニャン氏はウクライナ側あるいは西側諸国の工作と判断して、こうつぶやいている。
『あなた達は私たちにどんな選択を迫っているのですかバカども! ウクライナの完全な破壊ですか? それとも核攻撃?』
このような言葉の数々はプーチン大統領を始めとするロシア政府関係者の意向を“忖度”どころか“拡大解釈”したものに思える。過激な愛国心のなせる技なのかはわからないが、隣国の国民をモンスターや悪霊に例えるなどあまりに“中世的”で私たちの常識とはかけ離れたものであるのは確かだ。3月14日「NO WAR」のプラカードを持ってニュース番組スタジオに乱入し、侵攻反対を訴えた元テレビプロデューサー、マリーナ・オフシャンニコワ氏とは正反対の存在といえるだろう。
「ロシアの独立系調査機関の世論調査で、ウクライナでの軍事作戦を“支持する”との回答が4月の時点で74%だったそうです。この侵攻は依然として高い支持を集めていますが、3月の調査よりは7ポイント下がっているそうです。相次ぐ西側企業の撤退や物価の高騰などでさすがに不満が高まってきているのでしょう」(前出のロシア在住経験のあるジャーナリスト)
そんな中、“核戦争も仕方ない”というほど煽るシモニャン氏の存在が世論にどんな影響を与えていくのかは注目に値するといえる。願わくば、彼女の“煽り”とは逆方向の「厭戦」の方向に進んでほしいものである。