姿勢と動きが改善できたら、次は、少しだけ負荷をかけてみましょう。

 たとえば僕は、エレベーターを待っているときなどに、かかとの上げ下げ運動をしてふくらはぎを鍛えます。余裕があるときは、エレベーターを使わずに階段を使ってもよいですね。

 毎日、少しだけ姿勢をよくしてキビキビ動く。ふと気づいたらつま先立ちして、たまには階段も使う。ほんの少しの行動の積み重ねで、体は着実にいい方向へと変わっていきます。

自分の体への興味も大きくなる

 ここまでできるようになれば、自分の体への興味も大きくなっていくでしょうから、日々の生活のなかで自然と体にいい行動を選択するようにもなっているはず。ちょっとした距離なら歩く。テレビを見ながらストレッチをする。そんな日々になっていくのではないでしょうか。

■筋トレにノルマはいらない

「もう少し体を鍛えたい」と感じたとき、ジムで指導を受けながら筋力アップをするのもいいのですが、そのための時間をとれないといった人も多いことでしょう。長く続けるには、日常の生活のなかで鍛えていくことも大切です。

 腕立て伏せ、スクワット、腹筋など、筋トレは器具もいらず、どこでもできます。世の中には運動の本やDVD、講座などがたくさん出ていますし、自分にあったものを選んで続けてみてください。

 ただし、ノルマを強く意識しないこと。ノルマ達成を目標にすると、続かなくなることが多いのです。

 たとえば「1日30回」と決めてしまうと重荷に感じるでしょうし、「今日はやりたくない」と思ったら1回もやらない日ができてしまう。やがて、それが2日、3日になり、気づけばずっとやらないようになってしまう。

 ノルマではなく、癖にする。「今日はやっていない」と気づいたら、1回でもいいのでやる。癖だからやらないでは終われない。1回でも体を動かせば、1回だけで終わることはまずないでしょう。いつのまにか5回、10回と回数が増えているものです。

■継続のコツは無理をしないこと

 運動を続けるためには、無理をしないことが大切です。僕はよりよいダンスを追求するために無理をすることもありましたが、ジェロントロジー視点ではおすすめできません。レベルアップや向上よりも、楽しさを優先して続けることです。

 ハードな動きを1回より、ソフトな動きを2回するほうがいいのです。ほどよいところで止めることができれば、無理なく楽しめるはずです。

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 僕たちの世代はつらいことに慣れるように指導されることが多かったと感じます。

 皆さんのなかにも、学生時代のイメージで「運動はつらいことを乗り越えるものだ」と思い込んでいる人がいるかもしれません。

 しかし、年を重ねてもアクティブに動き続けるためには、そうしたイメージはむしろ悪影響になりかねないのです。

「ちょっと疲れちゃったな」と感じるときは、ペースダウンすることも大切です。

 気持ちが乗らないときの筋トレは本当につらいですよね。僕自身もペースダウンすることはあります。もちろんやる気を出す努力をしていますが、それでも厳しいときは「無理矢理やるものじゃないな」と割り切ります。

 ゆるく、長く、それがジェロントロジーです。


SAM(さむ)
ダンサー、ダンスクリエイター、ジェロントロジスト、美齢学指導員
南カリフォルニア大学デイビススクール ジェロントロジー学科通信教育課程修了。1993年、TRFのメンバーとしてメジャーデビュー。コンサートのステージ構成・演出をはじめ、多数のアーティストの振付、プロデュースを行い、ダンスクリエイターとして活躍中。2016年には一般社団法人ダレデモダンスを設立、代表理事に就任。誰もがダンスに親しみやすい環境を創出し、子供からシニアまで幅広い年代へのダンスの普及と、質の高い指導者の育成、ダンサーの活躍の場の拡大を目指す活動を行っている。最近では、能楽の舞台にダンサーとして初めて出演した。