ひとり自然の中で過ごして楽しむソロキャンプブームが続く。だが、その一方でさまざまなトラブルも。事前の知識や準備が足りないことで起きるケガや事故だけでなく、性被害に遭ったというケースもあるという……。特に初心者が陥りやすいトラブルを専門家に聞いた。
女性ソロキャンパーの防犯問題
さわやかな気候の中、アウトドアを楽しむ人も増えるこの時季。特にコロナ禍で、『密』が避けられるとして人気が急上昇したのがキャンプ。中でもひとりでキャンプを行う「ソロキャンプ」人口が増えている。
だが空前のブームを前に、女性ソロキャンパーが不安を覚えるのは防犯問題だ。キャンプ歴3年の会社員、後藤美樹さん(30代・仮名)は、過去のゾッとした出来事を語る。
「以前、ひとりでキャンプに行ったとき、テントを設営していたら中年男性に『テント立てられる?教えてあげるよ』と声をかけられたんです。親切心からの言葉かもしれないし、角を立てたくないので、やんわり断りました。けど夕方に焚き火をしていたら“あぶなっかしいな〜。正しいやり方、教えてあげる”としつこく話しかけてきて」
『教え魔』に遭遇してしまった美樹さん。夜には、信じられない出来事が起こった。
「私が寝袋で寝ようとしていたら、その男性がいきなりテントを開けてきて“夜は気温が下がるし、危ないから気をつけてね!”って言うんです。あまりの恐怖に、なかなか寝つけませんでした」
場合によっては、住居侵入や軽犯罪法など自治体の条例に触れる可能性もある言動だ。
美樹さんが遭遇した『教え魔』は残念なことに数は多い。さらには、ソロキャンプ中に性被害に遭ったというケースも……。
鍵がないテントでひとり過ごす女性のソロキャンプは、やはり危険なのか?ソロキャンプの普及活動をする「日本単独野営協会」の代表理事、小山仁さんは語る。
「この後藤さんの例は、同じ男性としても腹立たしいです」
そう憤る小山さん。実はソロキャンプの最も大きなリスクはケガやヤケドだという。
東京都の塾講師・小島洋子さん(30代・仮名)はソロキャンプ中の事故を明かす。
「ナイフで木を削っていたら手をざっくりと切ってしまい……。血がたくさん出て目の前が真っ暗に……」
幸い近くに別のキャンパーがおり、助けを求めて搬送された。数針縫う大ケガだった。
洋子さんだけでなく、ガスバーナーやガスコンロを使用する際、使い方をよく理解せずに着火。火が消せなくなり、パニックでボンベを爆発させてしまった事故も起きている。どちらも一歩間違えれば命にかかわる大惨事となる。
「女性ソロキャンパーに限らず、です。薪割りの際に斧でケガをする、焚き火のヤケド、ナイフで手を切るなど、初心者のケガの事例は実に多いですね。また風の強い日に焚き火をして、周囲に燃え広がってしまうなど、火の不始末も。あわや消防車が出動……なんてケースも少なくありません」(小山さん、以下同)
季節によっては、熊やイノシシなどの野生動物に遭遇する危険性もあるという。
「あくまでキャンプは、自然が相手のアクティビティー。特にソロキャンプは、自分のことは自分で面倒を見るのが大原則のため、最低限のスキルが必須です。初心者のうちは、何度かベテランのキャンパーに同行して“こういう日には焚き火をしたらダメなんだな”など経験を積んでから臨むとよいでしょう」