国際政治アナリストの上郷ほたる氏はこう分析しています。「トランプ氏は内心、ジョー・バイデン大統領が属するアメリカ民主党や経済界とマスク氏の繋がりを訝しんでいます。いざ再利用したは良いが糠喜びで、肝心の大統領選間近に不慮の言論統制を敷かれはしまいか。そのリスクを勘案すれば、労力を掛けてでも自前のSNSを開設した方が賢明だと、現時点では算盤を弾いています」
私の前回の原稿、「ウクライナ侵攻、追い込まれたロシア・プーチン大統領がトランプ前アメリカ大統領にすがる日」(4月7日公開)では、トランプ氏が今回の戦争の調停に乗り出す可能性を指摘しましたが、現在は機が熟する、つまり西側諸国の和平への機運を見定めている状況のようです。
安倍晋三元総理は「私は27回もウラジミール・プーチン大統領と交渉を重ねてきた。NATOや米国からマンデート(委任)が与えられれば交渉はやぶさかでない。しかし、それがないと意味を成さない」と語ります。トランプ氏も同じスタンスでしょう。
国民生活を脅かす超円安、岸田総理は食い止められるか
そうこうしてる間に、為替相場が日本経済に影響をもたらし始めています。4月末に1ドルは130円を越え、20年振りに急激な円安が進んでいます。財務官僚でもあった鈴木馨祐元財務副大臣は、「ウクライナ侵攻によるエネルギーコストの高騰に続き、穀物の価格も上昇すれば、悪い円安になり得る。金融政策では限界があり、経済を加熱させるには人やカネを流動化させる構造改革しか解は無い」と警鐘を鳴らしています。
不動産業界の最前線で汗を流す、リシェスホールディングス代表取締役の井出博之氏は「超円安で、中国人が日本の不動産を買い漁れる状況に拍車が掛かった。逆に、日本人の不動産オーナーは、物価高騰で内装代が跳ね上がり、手離さざるを得なくなってくる。2極化で大変なことが起きています」と危機感を露わにしています。
この超円安とウクライナ侵攻による原油高・穀物高での物価高騰は国民生活への脅威であり、今は「経済有事」といえるでしょう。
今月23日、岸田総理は一連の首脳外交の総仕上げとして、初の来日となったバイデン大統領と日米首脳会談を行います。対ロシア戦線、米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げによる超円安が俎上に上ります。例えば、日米による円買いの協調介入のプランを策定する、あるいは共同会見で示唆するなど、この経済有事で岸田総理が何らかの成果を挙げることができるか注目されます。