誹謗中傷に苛まれた日々

 SNSによる誹謗中傷だ。

「悲劇のヒロインぶるな!」

「募金詐欺か!」

 それは美咲ちゃんが行方不明になった直後から始まった。その急先鋒となった「怨霊の憑依」と呼ばれる謎のブログまで登場し、

「とも子の周りは薬物関係者」

「美咲ちゃんの事件は臓器売買で海外まで連れ去られた」

 といった根拠のない話を並べ立て、美咲ちゃんのことで頭を抱えるとも子さんの傷口に、塩を塗り込んだ。

とも子さんを誹謗中傷する「怨霊の憑依」と題したブログ主の自宅を直撃し、1時間にわたり話を聞いたことも。半年後、名誉毀損の罪で逮捕された
とも子さんを誹謗中傷する「怨霊の憑依」と題したブログ主の自宅を直撃し、1時間にわたり話を聞いたことも。半年後、名誉毀損の罪で逮捕された
【写真】小倉とも子さんを誹謗中傷、逮捕された野上幸雄被告を直撃すると

 こうした心労が重なり、とも子さんは報道陣を前に会見するときはいつも、事前にどんな内容を話すのか考え、そして自分の言葉がどう報道されるのかを気にしていた。会見が終わると「今の私の言い方大丈夫でしたか?」とわざわざ報道陣に確認する場面もあった。それほどまでにとも子さんは繊細で、世間の受け止めを意識せざるをえない状況に追い込まれていたのだ。

 前述のブログを管理していた野上幸雄被告(71)は名誉毀損罪に問われ、千葉地裁は昨年末、懲役1年6か月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。野上被告は控訴し、現在、東京高裁で審理が続いている。

 美咲ちゃんの行方不明からちょうど2年が経過したときのこと。当初に比べて報道の数が減っていく焦りも感じていたのか、とも子さんはあるとき、こう漏らした。

「今でしたらいつでも取材をお受けしますよ」

 あれほどまで週刊誌嫌いだったとも子さんが、自ら取材への協力を申し出た言葉に、藁にも縋りたい気持ちがにじみ出ていた。