田舎を取るか、都会を取るか

 では、一家の主・松岡はどこにいるのか。奥さんに教えられたのは、横浜・白楽にある『カメヤ食堂』という小さな飲食店。さっそく向かってみると、ラフなTシャツ姿で、2年前よりもさらにヒゲが伸びた松岡が出迎えてくれた。

「1年くらい前から、子ども4人を食わせていくのが厳しくなりました。切羽詰まっていたタイミングで、こうして雇っていただける店があったんです。このヒゲ? 今が人生でいちばん伸びてるね」

 松岡は1996年にファッションの仕事を始め、2018年には自らのブランドも立ちあげた。しかし、コロナ禍で経営が行き詰まってしまう。

「細々とアパレルをやるというのも大変。Tシャツ20枚、30枚という発注だけで利益を上げるのは厳しい。自宅の近くで働こうと思っても、俺が運転免許を持っていないから難しい。田舎を取るか、都会を取るかで悩みますが、まずは稼がなきゃと思い、でも、ちゃんとこの仕事をやるぞというつもりで頑張っていきます。いつか伊豆に店を出すなら戻る可能性もありますが、今は早く帰りたいとか、そういう気持ちで仕事はしていないですね」

ーー伊豆では奥さんが薪を割ったりもしていました。

「けんしょう炎になって大変みたいだけど。妻はYouTubeで『4姉妹ドキドキチャンネル』というのを始めて、田舎暮らしの様子を発信していますよ」

――アパレル業に戻ることはない?

「未練はないですね。月に2、3人は、また洋服のデザインやりませんかって言ってきますが。在庫管理して、梱包して、ネットにアップするとか、すべてはできないです。今はコロナ禍も含めて、やる時期ではないですね」