目次
Page 1
ー 遠藤健慎は1000人のオーディションから抜擢
Page 2
ー かわいいけど、奥さんじゃない(笑)

「撮影中、雨が降らない日が1日もなかったんです。全日、雨」

 と笑う稲葉友に、同意して大笑いの遠藤健慎映画『恋い焦れ歌え』で共演した2人、この日もしっとり雨模様となった。けれど2人が雨男なわけではないらしい。

稲葉「なぜ雨続きだったか? 梅雨の時季だったんです!」

遠藤「しかも山間部のロケ!」

稲葉「理にかなった雨です!」

遠藤健慎は1000人のオーディションから抜擢

遠藤健慎(撮影/吉岡竜紀)
遠藤健慎(撮影/吉岡竜紀)

 仲のよさが伝わってくるテンポ抜群の軽妙な掛け合い。だが、映画の内容は非常に重い。暴漢に襲われ身も心も陵辱される小学校臨時教員・桐谷仁(稲葉)と、仁の心の傷を容赦なくえぐり、それをラップで表現しろと挑発する謎の青年KAI(遠藤)。社会からはみ出した男たちが、“このクソみたいな世界で、愛をぶち抜く”というキャッチフレーズそのままに、全身全霊でぶつかり合う。

 出演の打診を受けて初めて台本を読んだときのことを、稲葉はこう振り返る。

稲葉「テーマの重さやうねりを上げる熱量を感じて。ここに飛び込むのはすごく怖いなとは思ったんですけど、でも面白いと思っちゃったから、逃げられないなと」

 孤高のラッパーKAI役の遠藤は、1000人のオーディションから抜擢された。

遠藤「趣味でラップをやっていたので“ラップの映画来たー!やってやるぜ!!”ってオーディションを受けました。台本を読んだときは“うわー! やばい!”しか出てこなかったです。それくらい衝撃的だった」

 役者自身にもトラウマを植えつけかねないほど、重く過激なストーリーが展開する今作。だが、素顔の2人は地元の先輩後輩のような気さくさだ。

稲葉「若いのに礼儀がちゃんとしてるというのが、健慎の第一印象。撮影が進むと、20歳(撮影当時)の男の子のはっちゃけた感じも見えてきて、いいギャップだなと」

遠藤「最初に会ったのがラップの練習で、“ラップは負けられない!”と思って行ったら、友くんがめちゃくちゃうまくて。カッコいい! すごい! それが第一印象でした。で、今はちょっとドSなお兄ちゃん、みたいな(笑)」

 と言いつつ、遠藤は稲葉宅で手料理をごちそうになったことがあると言う。

遠藤「ハンバーグを作ってくれて、めちゃくちゃおいしかったです。しかも、余ったご飯を冷凍するとき、僕は全部まとめて袋に入れちゃうんですけど、友くんは1食分ずつ丁寧に分けて入れるんです。これが稲葉友なんですよ!」

稲葉「だいたい175グラム」

遠藤「それを肌感覚でわかるのがすごいし。あと、家もめっちゃきれいですからね!」

 まるで憧れの先輩を自慢するかのような遠藤のドヤ顔に、照れる稲葉。遠藤は「俺、やります!」と言おうか迷ったが、自分にはできないと断念したそう。そんな遠藤に、

「お前にやらせるかっ。175グラム量れんのか!?(笑)」

 と、稲葉のドSツッコミが炸裂。微笑ましくなるザ・男子な掛け合いだ。

 また、今作で大きなポイントとなっているのがラップだが、2人はもともとヒップホップが大好き。稲葉も、遠藤のラップに「すごくうまくてびっくりした」と言う。

稲葉「最近は若くてうまいヒップホップアーティストがずいぶん増えたなあと思っていたんだけど、え、役者もラップうまいの!?って、驚いた」

遠藤「僕は逆に、ヒップホップって僕らの世代で流行りだしたと思っていたから、友くんのラップを聴いて、“うっわ、好きなんだな! そのころからヒップホップあったんすね!”って思った(笑)」

 国語教師の仁によるラップは、さまざまな俳句を歌うもの。ここで稲葉は、幼少期から習っていたピアノも披露している。

稲葉「撮影当日に、俳句を1つ外すことになって。鷹についての句だったんだけど、全部つなげてイメージを作っていたから、やっているときに一瞬、頭の中で鷹がビュンって出てきて焦った(笑)」

遠藤「全然わからなかったですよ。見てる側は鳥肌でした!」