スタ☆レビのツアーは「年単位」

「売れているアーティストのツアーは3か月くらいですが、僕らは1年以上。アルバムのツアーって、そのアルバム曲を中心に演奏できるんです。僕らはツアーが長いぶん、そのアルバムのことを噛みしめていられるから、そのおかげでライブをさらに楽しめるようになりました。ほかのミュージシャンにも、長期間のツアーをやったほうがいいって伝えたいですね(笑)」

 それだけこだわってきたライブも、コロナ禍であり方が変わってしまった。

「ライブを見ない人にとっては、たしかにライブ会場って飛沫や感染経路の温床のような気がしますよね。でも、音楽業界は感染対策のガイドラインをしっかり作って、ライブ会場は安心できる場所なんだというのをみなさんに知ってもらおうと頑張っています。僕らもそうです。まだ声を大にして“ぜひおいでください”とは言えないけど、ライブを自分の心の糧にしてくれているような人のためにも、しっかり感染対策しながら地味に(笑)やっていこうと思っています」

 それは、スタッフのためでもある。

「舞台や照明、楽器や音響のスタッフは専門職なので代わりがいないし、スタッフに食いつないでもらわないと、このあと僕らが動けなくなってしまいますしね。とにかくスタッフに元気でいてもらうために、という気持ちもありました。コロナが収まってから大々的にライブをやるほうが、お客さんは入るかもしれませんが、休んでいる期間にスタッフも機材も潰れていくんです。それだけは避けたかった」

 感染対策をしていても楽しめるよう、演出にもこだわりが。

「スタ☆レビのライブはもともと、お客さんも一緒に歌って楽しむ場でした。それができなくなってしまったので、とにかくみんなにいつも以上に楽しんでもらえるように、“お芝居にしてしまおう”と。僕らの音楽とお客さんの拍手を武器に、エイリアンと戦うという設定で、最後にはエイリアンをちゃんと倒すんです(笑)。こういうときだからこそ楽しめることをやりたいと思って、休憩時間を作り換気をしながら撮影自由の時間を作ったりもして。マイナスから始まっているなら、それをなんとかプラスにしようとアイデアを出し合いました

スタ☆レビのライブの醍醐味は、根本のMC

「たしかに“スタ☆レビはトークがおもしろい”と言われたけど、しゃべりに自信があるわけでもなく“俺はおもしろいのか……?”と(笑)。でも、“褒めてくれるならしゃべりももうちょっと頑張らないと”という気になりました。人に言われて気づかされた感じですね」

 MC力は、芸人たちの近くで鍛え上げられた。

30年ほど前に、大阪のMBSラジオ『ヤングタウン』を笑福亭笑瓶さんと野沢直子さんと3人でやっていて、そこでトークを学びましたね。普通のことを話していても、空気や呼吸で、思わず笑わされてしまうんですよね。それを見て、“これがおもしろいということか”と。笑瓶さんと野沢直子さんは、その点において天才的だと思います。僕はただ笑っているばかりでしたが、そこでMCが成長したのかもしれません」

 では、音楽のルーツはどこにあるのか。

「子どものころは、ビートルズやラジオから聞こえてきた洋楽に魅了され、ギターを始めたころはエリック・クラプトンの影響で白人ブルースに憧れました。高校のころ、山下達郎さんやはっぴいえんどの日本語のポップスに出会い、服部良一さんのメロディーに衝撃を受けて、さらにオリジナルを作り始めたころは桑田佳祐さんの影響は大きかったですね。ファーストアルバムは、サザンオールスターズみたいなものをつくろうとしていたくらい(笑)。

 あるとき、山下達郎さんと桑田さんと、ミュージシャンの杉真理(まさみち)さんと僕で、もつ鍋を食べに行ったことがありました。夜の6時か7時くらいから始まって、最後は桑田さんのご自宅に行き、終わったのが朝の6時くらい。その間、ずーっと音楽の話をしていました。みんな音楽オタク(笑)。あんなに楽しい時間はありませんでした」