沖縄料理をさらにおいしくするのは?

 沖縄料理の定番といえば、やはりチャンプルー。もともとは「ごちゃ混ぜにする」といった意味合いの言葉で、『ちむどんどん』のなかにもさまざまなチャンプルー料理が登場する。

「チャンプルーというのはただ炒めるだけではなく、より本質的には“炒め煮”という側面が強いんです。沖縄の食材は軽く炒めただけだと味がなかなか入らないなと感じていたのですが、ラードやだしを使って軽く煮込むことで全体の味がうまくまとまるし、食材に味もしっかり入っていきます。チャンプルーの奥深さをより感じるような発見でしたね」(知子さん)

「もちろんゴーヤーチャンプルーは人気なのですが、豆腐チャンプルーもよく食べられています。昔は夏になると採れる野菜も限られてきて、ゴーヤーかモーウイという赤瓜ぐらいしか出回らない時期もあったようです。そういった季節にはゴーヤーはたくさん食べられるのですが、独特の苦みが苦手だという子どもも多い。

 沖縄の人はみんなゴーヤーが大好きという話でもなくて……やっぱり苦いのが苦手な子も多いんだなっていう、当たり前だけどほほえましいエピソードに触れられたのもよかったです」(秀治さん)

 クランクインから半年がたつなか、『ちむどんどん』の撮影現場にはどのような苦労や楽しみがあるのだろうか。

「私たちの本業はギャラリー兼料理店なのですが、そちらの手を止めて、今はドラマの撮影にかかりっきりになっていますね。特に『ちむどんどん』は料理自体のボリュームも多く、すごくやりがいがあります。画面でアップになる料理だけでなく、エキストラさんが食べる料理なども含まれるので、準備はすごく大がかりです」(秀治さん)

 もちろん、おふたりの役割はドラマに出てくる料理を作るだけにとどまらない。

「役者さんに調理のちょっとした所作をお伝えしたり、料理の流れをチェックしたりということもやりますね。

 撮影スタジオのなかで“実際に調理をしたあとはこうなってるだろうな”とセットをちょっと動かしたり、“実際にはもっと汚れたりするな”と、シンクやまな板を汚してみたり……料理監修の視点からも、より自然なリアリティーを出せるようお手伝いすることも多いです」
(知子さん)

 ただの料理ではなく“暢子の料理”を仕上げていきたいという思いも強いようだ。

「物語に合わせて料理自体を工夫するのも楽しいです。比嘉家は裕福ではなかったので、沖縄そばを出すにしてもお肉があまりのっていないものにしたり、さまざまな調味料が売られていない時代だからこそラードでうまみを出したり……そういった工夫のなかで、暢子の料理はより素直で豊かなものになっていると思います」(秀治さん)

沖縄そば。。『ちむどんどんレシピブック』では沖縄料理からイタリア料理まで、えりすぐりの絶品料理のレシピを紹介
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 撮影のなかで、オカズデザインさんが「ちむどんどん」する=(心が高鳴る)瞬間はどんなときだろうか。

「今回の撮影で初めて料理が出てくるのが、子ども時代のチャンプルーでした。水分が出すぎないよう、いちばんおいしく見えるタイミングを見計らうのが意外と難しい料理なのでかなり緊張して臨みました。  撮影が終わったあと、子役のみんなが“ゴーヤーがとってもおいしかった!”と駆け寄ってきてくれたときには、うれしくて“ちむどんどん”しましたね(笑)」(知子さん)

 5月27日には『ちむどんどん』に登場する料理のレシピ本も発売された。

沖縄料理のスローな部分を大事にしつつも、時間がかかりすぎないレシピがたくさん載っています。ドラマの中で暢子が持ち歩く『おいしいものノート』をのぞき見るような気分で手に取っていただけたらうれしいです」(知子さん)

ちむどんどん』の今後のストーリー展開はもちろん、オカズデザインさんが手がける豊かな料理にもご注目を。

ドラマで見たレシピ満載の一冊。 『ちむどんどんレシピブック』(NHK出版刊、1320円)

 教えてくれたのは…オカズデザインさん ●料理とグラフィックデザインのチーム。代表の吉岡秀治・知子夫妻を中心に“時間がおいしくしてくれるもの”をテーマにした幅広い活動を通して、シンプルで普遍的なもの作りを目指す

〈取材・文/吉信 武〉