持ち家は年月とともに老朽化、賃貸住宅の入居審査はなかなか通らない。サービス付き高齢者向け住宅や老人ホームなどに入居しようにも金銭的に厳しい─。シニア層が直面する住居問題。それを解決する選択肢のひとつが『シェアハウス』生活だ。
シェアハウスとは1つの住居に複数人が共同生活をする賃貸物件のこと。高齢者向けシェアハウスおよびその類いの物件を含めて全国で50か所ほどあるとみられている。介護サービスはないが老人ホームなどに比べて賃料が安価なことから注目されている。
「誰もがシェアハウス生活が合うわけではない」
「入居希望者はアクティブで、そこでの交流を目的にしている人が多いですね。そしてみなさん、『見守り』についても期待しています」
そう説明するのは高齢者の住宅事情に詳しい満田将太さん。満田さんはこれまで高齢者向けシェアハウスの立ち上げなどに携わってきた。
「私が関わっている物件でも単身で入居している男性が居室で倒れているところを発見され、一命を取り留めたことがありました。普通の住宅で1人暮らしをするより孤独死のリスクは圧倒的に低いと思います。多くのシニア向けシェアハウスでは入居者同士の交流に重きを置いていますから、1日1回顔を合わせなかったら気に留める人も出てきて、声かけをします。だから異変があっても早期発見につながる」(満田さん)
シェアハウスの入居者にとって同居人は孤独を埋めてくれる新たな家族。高齢者向けシェアハウスで暮らす横田文雄さん(70代・仮名)。子どもとは疎遠のため、妻の死後はずっと1人暮らしだった。
「アパートに住んでいたころは1週間ほど誰とも話さないことはざら。ここでは毎日誰かいるし、一緒にお茶を飲んだり、食事をしたり、毎日が本当に楽しい」
横田さんは笑顔でそう語る。
「シェアハウスなら同じような境遇の仲間もいるし、安いスーパーから地域活動まで、さまざまな生活情報の交換もできます。私が知っている入居者はまだ元気なうちに住み替えて、交流をしながら共同生活を楽しんでいます。多少のストレスは抱えているかもしれませんが表面上はみなさん楽しそうですし。和気あいあいと生活していて羨ましいくらいです」(満田さん)
だが、誰もがシェアハウス生活が合うわけではない、と満田さんは指摘する。シェアハウスはあくまでも共同生活の場。
そのため「家賃が安い」「介護になっても安心」「身体が動かなくなっても家事をやってもらえる」だけの気持ちで入居するのはトラブルのもと。むしろ退所を促され、1人寂しい老後を送りかねない。