若い才能が来るように、そして育つように

 1月に66歳を迎えているが、本作でももちろん、その存在感は増すばかり。そんな役所に夢を聞いてみると、熟考ののちこう答えてくれた。

「今、是枝(裕和)さんや西川(美和)監督など、そういう監督さんたちのグループの方たちが、よりよい映画界を作るために活動を始められているんですよ。パワハラだったり、セクハラだったりもありますが、若手を育成するプログラムとか。

 やはり僕たち(俳優)やスタッフは何の保証もないじゃないですか。コロナ禍で作品が中止になると、どんどん辞めていってしまう状況がありまして。それを何とか救いたい。映画界に若い才能が来るように、そして育つように。

 “日本映画全体の底上げをしていこう”という活動に賛同しまして。これから残り少ない俳優生活の中で、何かそういうことの役に立てればいいな、と。やっぱりね、映画に出たいとか作りたいとか、夢のある若者たちに何とか良い環境を作ってあげたい。すごくそう思いますよね」

 日本映画界には役所広司がいる、だから大丈夫―。そう思わせられる力強さとやさしさがあった。

主演俳優としての心得

「主演っていうのは、みんなが主人公をよく見せるために尽力し、支えてくれる。そういう意味では、下手でも努力はしなきゃいけない(笑)」

 まさか、下手って演技のことですか?

「うん、下手下手(笑)。共演者を含め、みんなが見せられるように作ってくれているんですよ。そういう意味では、映画は本当にひとりじゃできない。支え合って、助け合って作るものなので。だから“アイツは嫌いだから助けてやらない”って言われないようにしないといけないですね(笑)」

老いを感じることは?

「日々、感じていますよ(笑)。撮影でも日常生活でも“筋力が落ちているな”とか。ジムには時々行っていましたが、コロナ禍になってからは散歩したり、自宅でバイクをこいだり。そっちのほうがマメにやるなと気づきましたね。意外とね、楽しそうだけど結構体力いるんですよ、僕たちの仕事は(笑)。

 体力が落ちると気力もなくなりますから。やっぱり、体力はあったほうがいい。そういう意味では、できるだけ老いというものには抵抗しなきゃいけないなと思いますね」

(C)2020「峠最後のサムライ」製作委員会
(C)2020「峠最後のサムライ」製作委員会

『峠 最後のサムライ』
 6月17日(金)公開 出演:役所広司、松たか子、仲代達矢ほか
 配給:松竹、アスミック・エース

〈ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.) スタイリング/安野ともこ 衣装協力/ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社〉