この争いの大きな焦点のひとつは、ヨナイの記事が続編のベースにもなっているのかどうかということ。パラマウントは、あの記事はオリジナル映画のベースにはなったが、続編とは関係ないと主張する。
一方で遺族は、続編にもオリジナルと同じ要素があると指摘。何より、ヨナイの記事がなかったら1986年の映画は存在しなかったのであり、そうなると続編も存在しないのだと、パラマウントの言い分を否定している。
もうひとつは、使用権が失効する段階で映画が完成していたかどうかだ。パラマウントは、2020年1月24日の段階で映画は完成していたという。しかし遺族は訴状で、映画が完成したのは2021年5月8日だったと、具体的な日を挙げて反論している。
訴訟は厳しいものになりそう
パンデミックで公開が遅れる中、2020年1月から2022年の5月まで、2年以上もの間、製作陣が本当にまったく映画に手を入れなかったのかどうかを証明できるかどうかは、大きなカギになるだろう。
パラマウントにとってさらに頭が痛いのは、遺族側の弁護士を、この分野で名を知られたマーク・トブロフが務めることだ。彼はつい最近、「13日の金曜日」をめぐる著作権訴訟で勝訴したばかり。すご腕著作権弁護士を相手に裁判となり、訴訟が長引けば、3作目の製作もその分遅れる。
人気アクションシリーズは、今日、メジャースタジオにとって最も大事なお宝だ。「3作目については今のところ考えていない」とブラッカイマーは語っていたが、2作目がこれだけヒットした今、スタジオが次を望んでいないわけはない。
それに、ブラッカイマーは今78歳、クルーズも来月で60歳だ。焦ってがっかりさせられるものを作ってほしくはないが、前回のように36年もかける余裕は到底ない。それ以前に、この成功の後味をできるだけ悪くしないためにも、スムーズな解決が望まれる。
猿渡 由紀(さるわたり ゆき)Yuki Saruwatari
L.A.在住映画ジャーナリスト 神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。