孤独を感じている人、自信がない人に発言が刺さっている
ひろゆき氏は遅刻に関していろいろ思うところがあるのか、《行列が出来てるラーメン屋と並ばないで入れるラーメン屋を見た時に、待たされる方を選ぶ人が日本人には多いので、わざと行列を作る店とかあったりします。飲食店の行列に並んだ事のある人は時間を守るよりも成果を優先しています(後略、原文ママ)》とツイートしています。よく意味がわかりませんが、おそらく「自分が気付いていないだけで、時間を守るより成果を優先している人はたくさんいる」と訴えたいのではないでしょうか。そのあたりの真偽はともかくとして、「行列のできるラーメン屋」のたとえを持ってくるあたりが秀逸だなと思いました。
Aというラーメン屋には行列ができているけれど、お隣のBというラーメン屋は並んでいる人がいない。みなさんはこの2つの店をみて、どちらがおいしい店だと思いますか? おそらくAだと思う人が多いのではないでしょうか。これは典型的な「バンドワゴン効果」と呼ばれるバイアス(思い込み)で、「自分が選ぶより、みんなが選ぶもののほうが正しい」「メジャーなもの、人気を集めるものをいいと思ってしまう」という心理が隠れていると言われています。つまり、みんなが並んでいるからという理由でラーメン店Aを選ぶ人は自分に自信がない人とも言えるのです。
6月23日に放送された『仕事とお金のマジメな話』(テレビ朝日系)にリモート出演したひろゆき氏は、就職倍率600倍の商社で働く女性の仕事ぶりを見て、「すげー時間の無駄だな」とコメントしていました。誰に対しても忖度なく切り込むひろゆき節を期待されてのオファーでしょうから、きちんとお仕事をしたと言えるのでしょう。しかし、ポイントはもう1つあるように思えるのです。入りたくても入れない人気企業の人にひろゆき氏がバッサリ行くことで、溜飲を下げたり、痛快だと思う視聴者も少なからずいたのではないでしょうか。
知らず知らずのうちに「二分法の誤謬」にとらわれ孤独を感じている人、就活がうまくいかず、人気企業に入れなかった人、自分に自信がない人。こんな人がいる限り、ひろゆき氏の人気は安泰と言えるのかもしれません。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」