店主の高橋ツナ子さんに昔の桑田について聞いた。
「当時はよく店の前で“ローハイド”を歌っていました。道に座って“ローレン、ローレン、ローレン”って。まさか歌手になるとは思いませんでした。テレビに出ているのを見てビックリしましたよ。特別顔がいいわけじゃないから(笑)」
「なんか作って」からファンの聖地に
桑田との信頼関係は厚く、4年前に店が創業60周年を迎えた際はビデオメッセージが届いたという。
「佳祐は中学時代の3年間、毎日通っていたんですよ。ある日、全部のパンが売り切れだったことがあって。けど佳祐が“お腹減ったからなんか作って”と言うんです。それで、レタス、魚肉ソーセージ、トマトを挟んだものを作ったら、ペロッと3つも食べちゃった。“食った食った”ってお腹をさすっていたのをハッキリ覚えています」
ただ、ツナ子さんはサザンのファンを相手に“商売”するつもりはなかった。
「うちは加山さんの雄三通りにある店だし、あとから出た佳祐ばかりを応援するわけには……。佳祐は“コンサートのチケット送るよ”と言ってくれますが、自分で買うようにしています」
だが“思い出のパン”を食べたいというファンは後を絶たず、ツナ子さんはそれに応えてきた。
「仕込みは夜11時からやっていたんだけれど、今は9時からやっています。“辞めないで”ってみんなに言われるけど、もう身体がキツイんです。64年間やって、思い残すことはないですね」
腹ペコで食べたパンの滋味は、桑田もきっと忘れないはずだ。